神経眼科

[No.381] ジャンクショナル・スコトーマ(接合部暗点、連合暗点)とは

ジャンクショナル・スコトーマ(接合部暗点)

私は、神経眼科の初診患者さんでは病歴を見て必要に応じて視野などの検査をオーダーし、MRIなどの画像診断もオーダーします。その採血結果が出揃うのに2週間ほどかかります。現在の自由が丘の新医院での診療は、昨年まで従事していた従業員20人規模の南砂時代とは違って、受付のお姉さん方と私だけののんびりしたものです。

今日は、接合部暗点を再度解説します。通常、眼科医はハンフリー視野しか取りませんが、これは視神経病変か?と思うなら、ゴールドマン視野を取り足して、見比べることをお勧めします。

視力の悪い側の眼の真っ黒な視野はさておいて、「反対眼の耳側欠損らしき変化」に目を付けて、ゴールドマン視野を見直すと、「悪いほうの目の視野が実は接合部暗点の一部としての中心暗点だった」ことが見えてきます。(下図参照)

となると、この症例での推定病名は「両眼の視神経炎」ではなく「視交叉付近の圧迫性病変」である可能性に傾き、紹介すべき先も「神経内科」ではなくて「脳神経外科」ということになります。

頭蓋内疾患と視野 著者:石橋一樹神戸海星病院 眼科ケア Volume 10, Issue 10, 36 – 41 (2008)を見ると:
片眼の中心暗点と他眼の上耳側半盲を特徴とする視野は、「接合部暗点(連合暗点)」と呼ばれます。この接合部暗点は、視交叉前部での障害で起こることがよく知られています。視交叉では視神経が「交差線維(鼻側網膜由来)」と「非交差線維(耳側網膜由来)」に分離し、交差線維は対側の中枢に向かって走行します。また、視交叉近傍には下垂体、内頸動脈などの構造物があり、占拠性病変の好発部位でもあります。視交叉における最も有名な視野異常は「両耳側半盲」です。下垂体腺腫などにより視交叉の内側の両交差線維(鼻側網膜由来)が障害を受けると、両側の耳側視野に障害が生じます。ただし下垂体と視交叉との位置関係には個人差があり、必ずしも下垂体腺腫が両耳側半盲を生じるわけではありません。:これは短くよくまとめられた記述です。
以前の私のブログにも類似の記事がありました。関連部分を抜き出すと
前部視路病変の視野

無題
○トラカールのオリジナルな接合部暗点:視交叉手前の視神経の限局性病変では片側の鼻側線維が障害され、同側眼の中心性耳側半盲を示す。

(清澤注:Eyeの論文の中の表にはJunctional scotoma of Traquair (unilateral temporal paracentral hemianopic scotomaとだけ書いてあり、オリジナル報告では患側の変化は中心暗点ではかった、という事らしいです。)

無題

清澤注:現在の用語ではもう少し進んで、
同側中心暗点 + 対側上4分の1盲:とされます。
– 視神経交差の前、フォンビルブランドの膝von Willebrand kneeへの髄膜腫などの圧迫。
– フォンビルブランドの膝は、視神経の下鼻側の線維が対側の視神経に4ミリほど入り込んでいる部分です。

○この病変が進展すると、同側視神経の乳頭黄班線維を中心とした広範囲の障害と対側眼由来のビルブランド膝障害が生じる。このため同側眼には広範囲の中心暗点、対側眼には耳上側半盲が現れる。このパターンも接合部暗点または連合暗点(ジャンクショナルスコトーマと呼ばれる。)という事になります。
次の動画も良くできています。

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