神経眼科

[No.4048] ヒトの網膜における暗順応の典型的なグラフ、意味、測定法を簡便に説明してください。

ヒトの網膜における暗順応の典型的なグラフ、意味、測定法を簡便に説明してください。

1. 暗順応の典型的なグラフ

ヒトの網膜で暗順応を調べると、次のような典型的な「時間―感度曲線」が得られます。

  • 横軸:暗室に入ってからの時間(分)

  • 縦軸:光に対する感度(あるいは閾値、逆数で表されることもある)

グラフの形は 2段階性 が特徴です。

  1. 最初の10分ほどは錐体(色を感じる細胞)が働き、感度が急速に上がります。

  2. その後、桿体(暗さに強い細胞)が主役となり、さらに感度がじわじわ上がり、20~30分ほどで暗順応が完成します。



(横軸=時間、縦軸=感度。途中で錐体主導から桿体主導に切り替わる「ロッドコーンブレーク」が見られる。)


2. 暗順応の意味

暗順応とは、明るい環境から急に暗い環境に移ったとき、時間が経つにつれて「だんだん暗いものが見えるようになる」網膜の適応現象です。

  • 錐体は明所での視力に強いが暗さに弱い。

  • 桿体は暗所に強く、光に対する感度は錐体の1000倍以上になる。

この両者の切り替えが、私たちが夜間に目を慣らしていく現象の正体です。


3. 測定法(暗順応曲線の求め方)

臨床・実験では次のように調べます。

  1. 被験者を明るい光に数分~10分ほどさらし、桿体を一度「飽和」させる。

  2. 直後に完全な暗室に入ってもらう。

  3. 一定時間ごとに「ごく弱い光の点」を提示し、見えたかどうかを答えてもらう。

  4. 光の強さを少しずつ調整し、「見える最小の明るさ(閾値)」をプロットする。

これを繰り返すと、錐体優位→桿体優位へと感度が切り替わる典型的な暗順応曲線が描けます。


まとめ

  • 暗順応は、明所から暗所に移ったときに網膜の光受容体が感度を高める適応現象。

  • グラフは最初の10分間は錐体、その後20~30分で桿体が主役となり感度が大きく上昇する。

  • 測定は暗室での閾値測定で行い、臨床的には網膜疾患(網膜色素変性症など)の診断にも利用される。

注;上に示した図(Webvision 他の資料より)では、縦軸が明るさ閾値(または対数光強度、閾値の逆数=感度の逆数)、(横軸が暗順応時間(分)という形で描かれています

NCBI+2Webvision+2

この標準的なグラフの特徴は:

このような“閾値(暗順応前よりどれほど明るさが必要か)”として描くスタイルが多数使われています。Reuter のレビュー “Fifty years of dark adaptation” も、こうした古典的曲線を振り返っています。サイエンスダイレクト

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