上斜筋麻痺における上斜視と外旋の関係
清澤のコメント:上図は各眼筋の作用方向を示す図。大阪医大のこの図のように上斜筋が内方回旋筋(上極が内方に向かう回旋を示す)であることを明確に示している図は少ない。ヘスチャート(下の図の右目(向かって右図)内下側への引きが足りない)や大型弱視鏡を持たない診療所において滑車神経麻痺を診断しようとすれば、パークス(ないしビルショフスキー)3段階テストによることとなります。3段階テストで診断をしたとして、患者の主訴は上下複視とともに回旋性の複視です。その回旋成分の簡単な評価に優れているのが眼底撮影画像を見る方法でしょう。その有効性がいかほどの物かを文献で調べてみました。
別の文献によると約半数しかこの法則には従わないともされています。大平は、麻痺眼20眼のうち9眼(45%)のみで病的外方回旋を認めた。片側性上斜筋麻痺患者の麻痺眼の他覚的回旋偏位角(DFA)においては,麻痺眼優位の患者が健眼が優位眼の患者よりも有意(p<0.01)に小さかった。片側性患者の健眼DFAは,正常者よりも大きかった(p<0.05)そうで、その結論は:上斜筋麻痺での麻痺眼における病的DFAの出現頻度は高くない。健眼でもDFAは増大している。優位眼はDFAに影響する。麻痺に対する運動適応・感覚適応も作用した結果,各眼のDFA値が決まるのであろうとしていました。眼底写真による判断の限界を知って、この方法は使うのがよさそうです。
――文献―――
上斜筋麻痺における上斜視と外旋の関係
イ・チョン・ジン他、
序文:上斜筋麻痺 (SOP) は、外傷、特発性、血管不全、腫瘍、または医原性因子によって引き起こされる最も一般的な孤立性脳神経麻痺です。上斜筋は、前部繊維が主に外旋力を眼球に与え、後部繊維が主に眼球を押し下げる力と外転力を与えるため、独特の解剖学的機能を持っています。これらの理由から、片側上斜筋麻痺(滑車神経麻痺)の患者は、一般に、麻痺した眼の上斜視および外旋を示します。上斜筋麻痺は9方向眼位の観察、正面注視における眼球位置のズレの測定、および(複視をかばうための)頭部傾斜位置によって診断されます。さらに、回旋変位(サイクロトーション)は SOP の非常に重要な機能障害です。ダブル マドックス ロッド テスト (DMRT)、眼底写真、大型弱視鏡、およびランカスター テストはすべて、サイクロトーションを評価するための有用なツールと見なされています。これらの方法は、主観的または客観的な方法でねじれ角を明らかにする可能性があります。しかし、サイクロデビエーションの測定値間の測定方法による不一致は十分に確立されています。Naらは外転ねじれと上斜視の両方が、下斜筋過活動 (IOOA) と有意な正の相関を示したと報告しています。上斜視と外旋は、先天性単眼 SOP で弱い正の相関を示しました。しかし、Na等の報告には、先天性および後天性麻痺の患者集団が含まれていました。
この論文の概要
目的:後天性上斜筋麻痺 (SOP) における上斜視と外旋との相関関係を評価すること。
方法:後天性片側 SOP 患者 31 人がこの研究のために募集された。各患者のねじれ角は、1つの客観的な方法 (眼底写真撮影) と 2つの主観的な方法 (ダブル マドックス ロッド テストと大型弱視鏡) によって評価されました。患者集団は、評価された上斜視眼(麻痺した目)とよりゆがんだ目(固視していない目)との間の対応に従って、2つのグループ(一致グループ、n = 19および不一致グループ、n = 12)に眼底撮影により分けられました。
結果
ねじれの平均値は 5.09° ± 3.84° でした。主観的外旋度は、ダブル マドックス ロッド テストおよび大型弱視鏡で測定して、それぞれ 5.18° ± 4.11° および 3.65° ± 1.93° でした。上斜視と外旋角度は、グループ間で有意差はありませんでした ( p = 0.257)。不一致グループでは相関関係は見られませんでしたが、一致グループでは上斜視と外旋性の間に有意な正の相関関係が示されました ( p = 0.011)。
結論
ねじれ偏差は、上斜視とは関係がありませんでした。しかし、上斜視眼が外旋を示した一致患者では、遠視と外旋との間に有意な正の相関が見られました。
キーワード:大型弱視鏡, 斜視, 後天性上斜筋麻痺, 捻転
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