全身病と眼

[No.1886] 眼科とサプリメント:日本の眼科特集紹介

日本の眼科7月号わかり易い臨床講座のテーマは眼科とサプリメントです。どのような話題なのかをお伝えするためにアブストラクトを採録してみます。

① 加齢黄斑変性とサプリメント 名古屋市立大学 安川力:〔要約〕加齢黄斑変性は,光線曝露を起点として数十年かけて蓄積する黄斑部の加齢変化とそれに伴う酸化ストレスが病態背景にあるため,予防としては禁煙と共に抗酸化サプリメントまたは緑黄色野菜の摂取が重要である。抗酸化ビタミンやミネラル
の組み合わせに関して,米国で大規模スタディとして実施された AREDS とその後の AREDS 2 の結果,現時点では,ビタミン C および E,ルテインおよびゼアキサンチン,亜鉛を含有するサプリメントの摂取が最も有効であるとされている。加齢黄斑変性の前駆病変を認めた時点で本サプリメント摂取することで 5 年間の発症率を約 25%抑制することができる

清澤のコメント:この説明は穏当と思われます。私も患者さんの一部にはサプリメントもお勧めしています。

② 緑内障と酸化ストレス,抗酸化治療の試み:東北大学 檜森紀子・中澤徹、〔要約〕 世界の失明原因第 2 位である緑内障の病態は,完全に解明されていない。近年,眼圧非依存性因子の中で酸化ストレスが緑内障病態に関与していることが報告されている。そこで,我々の研究データを呈示しながら緑内障における酸化ストレス研究について説明する。また,酸化ストレス上昇によって,脂質・蛋白・DNA 障害,炎症反応,血管内皮障害が亢進し,網膜神経節細胞死が生じているのではないかと考えており,抗酸化治療によってこの一連の障害メカニズムを抑え,緑内障進行が抑制されることが期待される。そこで本稿
では,抗酸化治療の可能性について動物実験や臨床データを紹介したい。

清澤のコメント:緑内障では必要かつ有効な点眼薬が比較的確立されている。私はグラジェノクスを紹介に含めてしているが、その利用者数は必ずしも多くはない。

③ ドライアイとサプリメント 久喜川島眼科・慶応大学;川島素子: 〔要約〕 ドライアイは,多因子疾患であり,酸化ストレスや炎症なども病態に関与していると考えられている。ドラアイの治療は眼表面の層別治療の概念に則った点眼治療や涙点プラグ等の局所治療が主であるが,抗酸化作用や抗炎症作用を持つサプリメントを摂取することにより,ドライアイの改善が期待できる。オメガ 3 脂肪酸の内服や乳酸菌・ラクトフェリンなども含んだ複合サプリメントを摂取することにより,ドライアイが改善したという報告がある。現時点ではエビデンスレベルはまだ弱く,日本人におけるドライアイサプリメントのエビデンスの蓄積が待たれる。

清澤のコメント:旧知の川島素子先生がこの文を著すほどに健在であることがわかり喜ばしいです。昨日レバミピド懸濁性点眼液2%という新薬剤見本が制約が椅子あから届けられました。ヒアレイン、ジクアスLX、ムコスタ(レバミピド)と日本では強力な点眼液が市販されており、また涙点プラグも比較的普及している。ドライアイ≒マイボーム腺機能低下と考えられるが、マイボーム腺機能低下に対する治療指針は最近公表されている。多くの眼科医によってそのあたりに沿った治療が行われていることだろう。

④ 白内障とサプリメント 金沢医科大学 久保江理:〔要約〕 水晶体内で最も多く存在するクリスタリンは,人間の寿命を通じてターンオーバーがない。このような長寿命のタンパク質は,酸化や糖化などの翻訳後修飾を受けやすく,加齢に伴う白内障発症の主要なメカニズムの一つと考えられている。白内障予防・進行抑制の手段として,抗酸化物質の使用に関する様々な研究が行われてきたが,いくつかの疫学研究では,抗酸化活性が高い食事やサプリメントなどは白内障リスクを減少させることが報告されている。過剰な抗酸化物質の摂取は避け,生体の酸化還元バランスを維持させるような食事摂取とサプリメントの補助的な使用は白内障予防に有用である。

清澤のコメント:白内障の治療には書記であればカリーユニ(ピレノキシン)を処方し、視力低下がある程度進めば、眼内レンズ移植を併せた白内障手術のために紹介するという対応をすることが多い。したがってサプリメントの出る幕は少ない。紹介先では、上手な手術をして頂けることが多く、感謝している。しかし、患者さんは手術が済めばそれで卒業できたと誤解して早々に通院を止めてしまわれることが多いのが問題であろう。最近、格子状変性のある目では術後網膜剥離が多いという話もあったし、手術という大きな外傷を受けているわけだから、眼鏡合せが終わった後でも術後の定期的な診察は必要と思う。

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