全身病と眼

[No.260] 米国眼科学会が「麻薬使用に関するベストプラクティス」を話題にしたワケ: 日刊ゲンダイの清澤インタビュー記事

清澤のコメント:この記事は昨日の日刊ゲンダイ紙面に公表された私のインタビュー記事ですが、ネット版には反映されない扱いだそうです。ご参考までにご笑覧ください。この機会にオピオイドで探すと、最初は痛みに対する医師の処方で麻薬の味を覚えてしまい、その結果で病的な麻薬中毒に陥る患者さんが多いようで、それが社会問題になっているそうです。覚せい剤では行動に異常をきたして問題を起こす事はあっても、それが原因で死亡はしないのですが、麻薬の場合にはその投与量が多いと呼吸抑制が起きて静かに死亡してしまうということが有るのだというのが医学生の知識だそうです。

ーーーー記事原案から採録ーーーーー

◎毎日100人以上が死亡

米国眼科学会が「麻薬使用に関するベストプラクティス」を話題にしたワケ

=米国では麻薬依存症は医原病!?

頭や膝、腰が痛い。人によっては片時も鎮痛剤を手放せないという人がいるだろう。なかには神経ブロック注射など、鎮痛効果の高いオピオイド薬を使用しているケースもあるかもしれない。しかし、オピオイド薬の使用には注意が必要だ。米国では毎日100人を越える人がオピオイドの過剰投与で命を落としており、オピオイドの不適正使用が社会問題になっている。

米国眼科学会のネット雑誌(2022年1月号)に興味深い記事が掲載された。「眼科における麻薬使用に関するベストプラクティス(最善の方法)」だ。わざわざこのテーマを取り上げるのは、米国ではオピオイド乱用の犠牲者が増加を続けているからだ。

米国疾病予防管理センター(CDC)によると、オピオイドの過剰摂取による死亡者は、2004年に9091人だったが、10年後の2014年には2万8647人に急増。さらにその数は、2015年には3万3091人、2016年には4万2000人以上と増加し、2019年には4万9860人に達している。

薬物使用と健康に関する調査では、170万人がオピオイド使用障害を患い、970万人が処方鎮痛薬を誤用したという。こうしたオピオイド依存症の多くが米国では医師が処方する処方薬から始まっている。「自由が丘清澤眼科」(東京・目黒区)の清澤源弘院長が言う。

「米国は麻薬大国と言われますが、その端緒は治療のための処方オピオイドにあり、ある意味、麻薬依存症は医原病であることが大問題になっています。つまり、医師の処方薬で麻薬の力を知った人が、処方オピオイドを買うだけの資力がなく、市中で安くて質の悪い麻薬に手を染めてしまうケースが繰り返されているのです。比較的オピオイドを使う事の少ない眼科医に対してもこうした記事で過剰投与にならないように警鐘を鳴らしているのでしょう」

そもそもオピオイドとは、ケシの実から生成される麻薬性鎮痛薬やそれと同様の作用を示す合成鎮痛薬の総称。麻薬性鎮痛剤の中でも、ケシの実から採取されるアヘンから生成される。モルヒネは日本でも広く知られている。

半化学合成物には、オキシコドンというものもあり、モルヒネと比べると約1・5倍の鎮痛作用がある。また、合成化合物にはフェンタニルなどがある。フェンタニルはモルヒネの50100倍の鎮痛効果をもたらす。

「こうしたオピオイド処方薬は日本でも手術中に使用したり処方したりすることが認められており、中度から重度の痛みに対する鎮痛剤として処方されています。ケガなどの慢性疼痛や、手術後の痛み、末期ガンからくる痛みへの薬として使用されいます」(都内の薬剤師)

しかもオピオイドの効果は痛みを緩和するだけではなく、摂取することで脳内の喜びをコントロールする箇所が刺激され、一時的に幸福感を感じる。

「とはいえオピオイドには吐き気、呼吸抑制、意識レベルの低下などの副作用があります。しかも多量に摂取すると常習性が生じ、一度に過剰に摂取すると死に至る恐れもある」(前出の薬剤師)

怖いことに眼科における麻薬使用に関するベストプラクティス(最善の方法)」ではオピオイド処方薬の投薬3日目以降で慢性的な使用の可能性が増加。5日間の投与で、1年間継続して使用される確率が10%と報告している。

「記事では米国では処方オピオイドはしばしばゲートウェイドラッグで、2000年代にオピオイドまたはアヘン剤を乱用し始めたほとんど(75%)の人々は、最初の曝露は処方オピオイドへの曝露だったとしています。そしてその後、低コストと入手可能性の向上によって違法薬物に切り替えられたと報告しています」(清澤院長)

米国では加入している保険によって医療の質が異なる。高齢者および障害者向け公的医療保険制度を受給している患者でのオピオイド処方率が圧倒的に高い。ところがオピオイドクライシスが深刻になり、当局による処方規制が厳しくなると、多くのオピオイド依存患者がフェンタニルやヘロインといった非合法のオピオイドに移行、過量投与による死者数の増加へと繋がったとされる。

では、日本ではその恐れはないのだろうか?

「日本では医師とはいえ、麻薬処方するには毎年更新が必要な麻薬免許が必要です。そのため、麻薬を扱える開業医は多くはありません。しかも、日本人は欧米人よりも痛みの耐性が強いこともあり、オピオイド処方薬を使う事は多くなく、それ以外の鎮痛剤を使っており、安全です」(清澤院長)

とはいえ、高齢化が進む日本では痛みに弱い人が増え、将来的にオピオイド処方薬を必要とする人もいるだろう。米国のオピオイドクライシスを他山の石にする意味でも頭の片隅に残しておくことだ。

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米国で問題になっているオピオイドの過剰摂取、対策の最新動向:記事紹介

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