全身病と眼

[No.3927] 肥満治療薬と副作用への向き合い方 ― 減量効果と副作用のバランス:記事紹介

肥満治療薬と副作用への向き合い方 ― 減量効果と副作用のバランス

清澤のコメント:この薬剤は糖尿の治療薬としても広く使われるものですが、脂肪の多い食事後に比較的すぐに起きて間もなく消退する下痢や、足の筋が脱落して歩く力が弱まるような自覚も出やすいものと自覚していました。JAMAの音声記事に詳しい記事がありましたので日本語にして要約してみました。

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近年登場したインクレチン関連薬は、従来の飲み薬では得られなかった大きな体重減少をもたらす画期的な治療薬です。体重が15〜20%減少する例も珍しくなく、肥満に伴う糖尿病や高血圧といった病気の改善にもつながる点は大きな魅力といえるでしょう。その一方で、吐き気や下痢、便秘といった消化器症状が一定の割合で起こることも事実です。

こうした副作用は多くの場合、薬を開始した直後の数日間に出やすく、その後は軽快していきます。脂っこい食事を控えたり、少量をこまめに食べたり、炭酸飲料やアルコールを避けるといった食生活の工夫で、多くの不快症状は和らげることができます。便秘が続く場合には、水分や食物繊維の摂取を増やすことも効果的です。つまり、薬の副作用は避けられないものではなく、生活習慣の工夫と医師の助言によってコントロールできる余地があるのです。

また、薬を途中で休んだあとに再開すると、副作用が強く出ることがあります。そのため、旅行などで一時的に中断した際には、再開時に少し低い量から始め直すことが勧められています。特に高齢者や腎臓に持病のある方では、脱水や栄養不足が重なりやすいため、注意が必要です。

こうした事情を踏まえると、肥満治療薬を用いる際に大切なのは「効果と副作用のどちらか一方を強調する」のではなく、両者のバランスを冷静に理解することだといえます。強い減量効果が期待できるからといって無理をして続ける必要はありませんし、副作用が出たからといって諦める必要もありません。量の調整や再開の工夫、食生活の改善など、柔軟な対応策があります。臨床試験でも、副作用が原因で服薬を完全にやめた人は1割に満たず、多くの方がうまく付き合いながら継続できているのです。

さらに、体重が大きく減ると脂肪だけでなく筋肉も減ってしまうことがあります。特に高齢の方では「サルコペニア」と呼ばれる筋肉減少症のリスクが高まるため、タンパク質を多めに摂取し、筋力トレーニングを組み合わせることが推奨されています。これは、体重を減らすだけでなく健康的な体を保つために欠かせない要素です。

結局のところ、インクレチン薬の利用は「強力な減量効果」と「管理可能な副作用」との間で折り合いをつける営みです。医師と相談しながら対処法を工夫すれば、薬を怖がりすぎる必要はありません。むしろ、減量と健康維持の両立を目指すための有効な道具として活用できるでしょう。

本稿は JAMA Clinical Reviews のポッドキャスト「Managing Adverse Effects of Obesity Medications」(2025年、司会 Mary McDermott、ゲスト Robert Kushner 医師)の内容をもとにまとめたものです。

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