全身病と眼

[No.4331] 糖尿病の薬が「虚弱」を遅らせる?― 高齢者の健康を守る新しい視点 ―


糖尿病の薬が「虚弱」を遅らせる?― 高齢者の健康を守る新しい視点 ―

高齢になると、「最近疲れやすい」「ちょっとしたことで体調を崩す」「転びやすくなった」と感じる方が増えてきます。こうした状態は医学的に「虚弱(フレイル)」と呼ばれ、要介護や寝たきりに進む前段階として注目されています。実はこの虚弱、糖尿病を持つ高齢者では進行しやすいことが知られています。

その理由の一つとして挙げられているのが、糖尿病に伴う慢性的な炎症や代謝の乱れです。こうした背景の中、最近、糖尿病治療薬の種類によっては、高齢者の虚弱の進行を遅らせる可能性があることが報告されました。(星信悦先生がこの記事を教えてくれました。この薬剤はマンジャロという最近使われることの多い、非インスリンの週一回皮下注射薬です。)

この研究は、米国の高齢者医療保険制度であるメディケア受給者の約7%という大規模な無作為サンプルを対象に行われました。2型糖尿病を持つ高齢者について、1年間にわたる虚弱の指標(病気やストレス、けがに対する弱さの程度)を比較しています。

その結果、SGLT2阻害薬GLP-1受容体作動薬と呼ばれる比較的新しいタイプの糖尿病薬で治療を開始した人では、従来から使われているDPP-4阻害薬を使用していた人に比べ、虚弱の兆候が進みにくいことが分かりました。言い換えると、「体がもろくなりにくい」可能性が示されたのです。

一方で、SU薬(スルホニルウレア薬)とDPP-4阻害薬を使用している人の間では、虚弱の進行に明らかな差は認められませんでした。すべての糖尿病薬が同じ効果を持つわけではない、という点も重要なポイントです。

SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は、すでに血糖値を下げる効果に加え、心臓や腎臓を守る作用があることが知られています。今回の研究は、それらに加えて「高齢者の体のしなやかさを保つ」という新しい視点を提示したものといえます。

もちろん、この結果だけで「この薬を飲めば虚弱にならない」と言い切ることはできません。食事、運動、社会活動など、生活全体が虚弱の進行に大きく関わっています。しかし、薬の選択が将来の生活の質に影響する可能性が示されたことは、高齢の糖尿病患者さんにとって明るい話題です。


清澤のコメント

糖尿病治療は「血糖値を下げること」だけが目的ではありません。高齢の患者さんでは、将来の虚弱や生活の質まで見据えた治療選択がますます重要になります。主治医と相談しながら、その人に合った治療を考えていきたいですね。


出典

Diabetes Care 掲載研究:米国メディケア受給者を対象とした2型糖尿病と虚弱進行に関する後ろ向きコホート研究

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