視力低下

[No.181] 糖尿病の診断を受けてから10年後には50%が網膜症を患う:日刊ゲンダイ自著記事④紹介

糖尿病の診断を受けてから10年後には50%が網膜症を患う

清澤のコメント:第3次のみんなの眼科教室 教えて清澤先生も本日水曜日で第4報になりました。日刊ゲンダイのウェブページがヤフーニュースに転載されています。記事を見てくださっている方々に感謝いたします。 公開日:20211215日 by 清澤源弘 バックナンバー

 

急速に目がかすむようになったら注意。年に一度は眼科検診を!(ランドルト環)

Q会社の健康診断で糖尿病疑いを指摘され8年になります。とくに対策を取らずにきましたが、放っておくと失明するとの話を聞いて怖くなりました。糖尿病と目の病気について教えてください。(53歳・男性)
A近年、食生活の変化や内科診断の進歩によって糖尿病の患者さんの数が増えています。その一方、糖尿病治療の進歩によって糖尿病である年数が長期化したため、その合併症である「糖尿病網膜症」になる患者さんの数も増加しています。 しかし、恐れることはありません。糖尿病になってもその大部分は糖尿病性網膜症の発症を予防または遅延させ、視力喪失を予防する治療法が存在します。
 糖尿病性網膜症の研究では、若年発症患者(幼児期と1013歳にピークがある1型糖尿病)の3.6%と高齢発症患者(2型糖尿病)の1.6%が、「眼鏡またはコンタクトレンズで矯正しても良い方の眼の視力が0.1以下、または良い方の眼の視野が20度未満」という法的な盲目状態でした。

2型糖尿病患者の最大21%は、糖尿病の最初の診断時に網膜症を患っていて、ほとんどの患者は時間の経過とともにある程度の網膜症を発症します。他の眼疾患が一般的であった高齢発症群では、法的な失明の症例の3分の1が糖尿病性網膜症によるものでした。
しかし、幸いにも視力を脅かす網膜症は、糖尿病の最初の3~5年ではまれです。別の統計では、糖尿病に10年以上罹患すると、その約50%に網膜症がみられ、20年以上では約80%に網膜症が合併するとされています
糖尿病性網膜症の視力喪失にはいくつかのメカニズムがあります。中心視力は、網膜の中心部分にむくみが起きて視力が急激に下がる黄斑浮腫または広範な毛細血管の閉塞によって損なわれます。高血糖が長期にわたり持続すると全身にさまざまな合併症が起こり、そのひとつが糖尿病性網膜症です。

慢性的に高血糖が持続すると、眼底にある網膜の細い毛細血管が障害を受けます。障害を受けた網膜の毛細血管には血栓ができて詰まったり、血管の一部が破れて出血したりして単純網膜症を起こします。
最初は、毛細血管が塞がれてしまうと眼底血管が拡張したり、蛇行したりする増殖前網膜症になります。不足した酸素を補うため、そこに新しい血管が発生します。新生血管は破れやすく出血を繰り返します。そうするうちに周囲に増殖膜と呼ばれる線維性の組織が生じて次の増殖網膜症に変わります。その増殖膜が網膜を引っ張り、網膜剥離を起こすと失明原因となるのです。
では、自分が糖尿病性網膜症かどうかはどのようにすればわかるのでしょうか? まずは「かすみ目」からチェックしましょう。視界がかすんで見えにくい状態をかすみ目と呼びます。老眼、近視、白内障では徐々に目がかすみます。一方、硝子体出血、加齢黄斑変性では比較的急速に目がかすみます。見え方を自分で確かめるには、壁掛けカレンダーの前に立ち、手で片眼をふさぎます。その状態で全体が一度に見えるか、縦横の線がゆがんでいないかをチェックします。

糖尿病の期間と高血糖は、網膜症の発症と進行の最も強力な因子です。微小血管合併症のリスクと血糖との間には関係があり、HbA1cが1%減少するごとに、微小血管病変のリスクも35%減少したそうです。ですから、血糖と血圧のコントロールが重要です。
網膜症が進行して、網膜血流の悪い部分が生じた場合は、糖尿病性網膜症の治療として「網膜光凝固」が行われます。タイムリーなレーザー光凝固療法は、重度の糖尿病網膜症及び黄斑浮腫の患者の大部分で視力喪失を防ぐことができます。
病気がさらに進んで、網膜剥離や硝子体出血が出る場合には、眼内の出血や網膜牽引組織を取り除く「網膜硝子体手術」が考慮されます。これは専門の病院で行われる高度な手術です。
糖尿病患者さんは少なくとも年に一度は眼科検診を受けることをお勧めします。

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