コンタクトレンズの装用は強度近視患者で近視性網脈絡膜萎縮の頻度を増加させるか?
強度近視になると網脈絡膜萎縮や新生血管黄斑症、黄斑円孔網膜剥離を生じる可能性が高くなるため、視力障害を生じることがよく知られています。殊に、強度近視患者においては強度近視性黄斑変性の発生は矯正視力を脅かす大きな要因となっています。これに関連して、教祖近視の高齢者はコンタクトレンズ使用を控えるべきである。眼鏡使用か手術的な対応を優先的に考えるべきだとも読める意見(⇒記事にリンク)がネットで見られました。私はこれには反対です。
そもそも強度近視患者では、(眼表面からレンズまでの距離が遠い)近視眼鏡による良好な視力矯正視力を得ることが困難です。現状においてはコンタクトレンズ、ことにハードコンタクトレンズを視力矯正の手段として用いている強度近視(マイナス6.00Dより強い近視)の患者さんが多く居られるのはそのためです。
ハードコンタクトレンズの不適切な長時間装用が角膜内皮密度の減少を招くという論はもっともです。コンタクトレンズの使用は年を取ると数が減少する角膜内皮密度の減少をさらに加速し、角膜の老化を促進することになります. コンタクトレンズ、特にハードコンタクトレンズの装着時間に制限がもうけてられている理由の一つは、角膜内皮の保護が目的です。ただし、装着時間の制限は守られないことが多いというのも現状です。
近視進行による眼軸長の延長が網膜にも進展負荷をかけ、黄斑部や周辺網膜に視力低下を引き起こす様な病変を引き起こすことはよく知られています。しかしこれは、コンタクトレンズ過剰使用に伴う角膜障害とは別の話です。
水晶体を人工水晶体に入れ替える手術によって結果的な近視を低減させる、或いは最近では、眼内コンタクトレンズを本人の水晶体の上に移植するという方法も存在します。しかしこれらの手術の網膜に対する害については十分に解明されているとは言えないでしょう。またこうして屈折値を下げても、眼軸長は長いままですから、近視性高脈絡膜萎縮の発生が減るとは思われません。
ですから、強度近視の患者さんにコンタクトレンズの使用をやめて、外科的な強度近視を減らす手術を進めるという議論をするのは時期尚早かと思います。
いずれにしても、高齢で強度近視がある患者さんにおいては、角膜に無理のかかる長時間のコンタクトレンズは避けるのが望ましく、眼鏡使用の併用を求めるということでよいかと思います。水晶体その他に手術的な手を加えるという場合には、強度近視眼ではそもそも網膜が脆弱であり、緑内障に類似した視神経病変も合併しやすいことも考慮に加えて慎重な手術適応の決定を求めたいというのが私の考えです。これは、強度近視の眼に白内障手術をすべきではないという意味ではありません。
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