コンタクトレンズ・眼鏡処方

[No.1109] 患者の自覚症状に基づく老視の診断と治療のための標準視覚基準の決定:論文紹介

清澤のコメント:老視とは、遠くを見たり近くを見たり、自由にピントを変える力が衰えることによって起こるもので、近くのものを見る際に困難をきたした状況をさします。市民の間では「老眼」と呼ばれています。しかし、老視の範囲をどうするかという事は明確には決まってはいません。それに対する意見を慶応大学眼科が述べています。

   ーーーーー公表された論文ーーーーーー

患者の自覚症状に基づく老視の診断と治療のための標準視覚基準の決定

.2021 Aug 31;10(17):3942.

doi: 10.3390/jcm10173942.

Determination of the Standard Visual Criterion for Diagnosing and Treating Presbyopia According to Subjective Patient Symptoms

概要

さまざまなモダリティを使用した老眼治療が最近開発されました。ただし、診断と治療のエンドポイントに関する標準的な基準はありません。この研究では、近見視力 (NVA) と有水晶体老眼の自覚症状との関係を評価し、有水晶体老視を診断し、老視治療の有効性を評価するための数値 NVA しきい値を決定しました。両眼距離、常習矯正を伴う NVA、および単眼の従来の VA を測定しました。患者は、老眼の認識と近距離での作業の難しさについて尋ねられました。この前向き観察研究には、70 人の患者 (平均年齢 56 歳、範囲 32 ~ 77 歳) が含まれていました。ほとんどの患者は40代後半で老眼に気づき、老眼に気付く前に、視力に関連する近くのタスクに困難を感じていた人もいました. 患者の 83% (20/24) は、習慣的に 0.0 logMAR (スネレン VA で 20/20) の矯正を行い、40 cm で優れた NVA を使用していても、近方視力に関連する作業に困難を経験しました。結論として、現在の研究では、患者は 40 代後半に老視に気付くようになったことが示されましたが、老視に気付く前に近見関連の作業に困難を感じていた患者もいました。さらなる調査には、老視の適切な診断基準の提案と、老視患者のより良い管理が含まれる必要があります。

キーワード: 診断; 視力に近い; 老眼; 標準的な基準。

   ーーーー直筋のメディカルトリビューン記事再録ーーーーー

メディカルトリビューン記事は「老視の診断基準、早期確立を訴え。自覚の有無を多施設で検討」というものです。要旨採録:2022年10月31日 16:05

老視は「加齢に伴って眼の調節力が減退した状態」と定義されるが、数値に基づく明確な診断法と診断基準は確立していない。慶應義塾大学眼科学教室教授の根岸一乃氏は第61回日本白内障学会/第48回水晶体研究会(8月27〜28日)で、近方視力の低下と老視の自覚の有無、近見作業の難しさの関係を検討した多施設共同研究の結果を報告。老視の診断基準確立の必要性を訴えた。(関連記事:「増える老視、将来の薬物治療に期待」

70例にアンケートを実施

 老視の診断では、一般的に「近方視力0.5未満」といった基準が簡便さの観点から使われることが多い。一方、過去の疫学研究では他に焦点深度曲線、コントラスト感度、調節幅なども用いられるなど、世界的に標準化された診断基準は確立していないのが現状である。そこで根岸氏らは、老視の診断・介入のための数値基準を検討する目的で多施設共同研究を行った。

 対象は、慶應義塾大学病院など4施設を受診した、診療上の必要性から屈折検査と視力検査を施行した両眼遠方矯正視力(CDVA)が0.8以上の患者70例。単眼、両眼でそれぞれ遠方、近方の矯正視力を測定し、老視の自覚の有無と近見作業(新聞を読む、長時間読書する)に関するアンケートを行った。

「自覚あり」は視力1.0から急増

 対象の年齢〔平均値±標準偏差(SD)〕は56.0±13.0歳(範囲32〜77歳)で、男性30例、女性40例だった。視力の測定結果(平均値±SD、logMR)は、単眼ではCDVAが−0.09±0.09、遠方矯正下近方視力(DCNVA)が0.28±0.33、両眼では日常矯正遠方視力(DVAHC)が−0.03±0.12、日常矯正近方視力(NVAHC)が0.05±0.16だった。

 アンケートの結果、対象の65.7%に老視の自覚があり、年齢別では45歳未満が0%、45〜49歳が50%、50〜54歳が87.5%、55〜59歳が100%と、45歳以降で割合が急増していた。また近方視力と老視の自覚の有無、近見作業との関係を見ると、40cmでの両眼NVAHC(logMAR)が0.0(小数視力1.0に相当)まで悪化すると、老視の自覚あり、新聞の閲読および長時間の読書が困難と回答した割合が急増した(図)

図. 両眼NVAHCと老視の自覚の有無との関係

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J Clin Med 2021; 10: 3942

 以上の結果を踏まえ、老視の診断指標について根岸氏は「近見作業が多い現代社会において、従来の近方視力0.5未満は適切ではない可能性がある」と指摘。近年は多焦点眼内レンズが白内障治療後の老視対策として用いられるケースも少なくないが、「老視に対する十分な治療介入のためにも、新たな診断基準を確立する必要がある」と述べた。

   ーーーー記事引用終了ーーーーー

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