調節緊張症(仮性近視)でわずかに近視化した児童の診察をしました。小児の近視を論ずる場合、まず最初に本当の近視であるのか、それともこの仮性近視(調節緊張症)であるのかの見極めをつけることが大切です。
仮性近視は、長時間近距離での読書をするといった「眼の調節機構の過剰刺激」による眼の屈折力の増加が原因で一時的に発生するものです。これは「二次性近視」と混同してはいけません。二次性近視には、レンズ屈折率変化による一時的な近視シフトと全身症候群に関連する近視が含まれます。
調節機構とは、眼球内の毛様体筋が収縮して水晶体を変形させることで、焦点を合わせる能力のことを指します。過剰な調節刺激が続くと、毛様体筋が痙攣してその結果で水晶体が変形し続け、屈折力が増加し、近視が発生します。やがてこの過剰な調節力は眼球の前後径(眼軸長)の変化に置き換わって永続的な禁止へと進行します。
仮性近視の診断には、アトロピンやホマトロピン(ミドリンP )点眼薬などの強い毛様体筋の麻痺剤を使用した調節麻痺剤屈折検査によって行われます。毛様体筋麻痺剤(シクロプレジア)は、毛様体筋を一時的に麻痺させることで、調節機能を停止させる薬剤です。これにより、眼科医は患者の真の屈折状態(近視、遠視、乱視など)を測定することができます。
毛様体筋の痙攣の結果、調節振幅と調節能力が低下する場合があります。このため、眼科医は調節振幅と調節能力のテストも行うことがあります。
仮性近視の治療の共通の目標は、調節をリラックスさせて仮性近視を除去することですが、それを達成するための戦略は様々です。文献では、さまざまな治療法が記述されていますが、管理について総括的な合意はありません。
一般的な治療法としては、眼精疲労を軽減するための視力休養や目のエクササイズ、適切な照明や姿勢の確保などの環境改善があります。また、近くのものを見るときに使用するリーディンググラス(読書眼鏡)や、遠くのものを見るときに使用する遠見用メガネなどの視力補正器具も処方されることがあります。重度の場合には、ミドリンM(シクロプレジア薬剤)を使用して調節機能を一時的に停止させることもあります。ただし、この治療法は医師の指示に従って行う必要があります。
その過程を経たのちに、真の近視が重畳して存在すれば、小児の近視進行予防措置を考える事になります。その手段には十分な戸外活動時間の確保、(夜間にハードコンタクトレンズを装用させて角膜を遠視化させる)オルソケラトロジー、眼への調節負荷を減らす多焦点コンタクトレンズや眼鏡の処方。薬剤治療としての低濃度アトロピン点眼などが挙げられます。しかしこのすべてが日本の国民健康保険でサポートされているわけではないので、その何れを行うかは保護者と医師とで相談して決めてゆく必要があります。(下記記事参照)
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