日本眼科学会が作成した「小児の眼鏡処方に関する手引き」これは、小児の眼鏡処方の必要性、適切な検査・矯正方法、眼鏡の調整や再処方の指針を提示しています。以下はその要点の章立てです。眼科医は一度は本文に眼を通しておきたいものです。でが日眼会誌10号に掲載され、その本文はネットでも閲覧できます。
緒言
小児における屈折矯正は視力の正常な発達、学習や社会活動への影響を考慮し重要です。また、小児の視覚発達を確保し、眼科的な異常を早期に発見する目的もあります。成人と比べて小児の検査は難しく、調節麻痺薬を用いた精密屈折検査が必要です。
第1章 総論
- 眼鏡処方の適応:弱視や斜視のある小児には、視覚発達や両眼視機能の確保のための矯正が必要。
- 屈折異常への眼鏡:矯正視力が良好でも両眼視や調節の正常化を目的とした眼鏡処方が推奨されます。
- 器質的疾患への眼鏡:黄斑や視神経異常のある場合には、遮光眼鏡や弱視用補助具を用いる場合があります。
第2章 視力・両眼視・屈折の発達
- 視力の発達:出生後に急速に発達し、3歳ごろで1.0程度に達します。視力は自覚的検査が難しいため、他覚的な測定が利用されます。
- 両眼視機能の発達:3〜4ヶ月頃から立体視が発達し、5歳までに精密立体視が完成します。
- 屈折の変化と調節発達:正視化のプロセスが重要で、調節力は加齢とともに低下します。
第3章 基本的検査
- 検査の流れ:頭位確認、眼位検査、細隙灯顕微鏡による観察、屈折検査、眼底検査を実施します。
- 特殊検査:角膜形状解析やOCT、MRIなどで器質的原因を評価します。
- 眼鏡処方の手順:必要に応じた調節麻痺下での屈折検査と眼鏡度数の調整を行います。
第4章 小児の視力検査
- 乳幼児の視力検査:選択視法やVEP、森実式ドットカードなどが用いられます。
- 就学前の視力検査:ランドルト環を用いる検査や絵視標での視力検査が推奨されます。
- 視力検査が難しい場合:神経発達症の特性に応じた視覚的サポートが重要です。
第5章 屈折検査
- 調節麻痺薬の使用:シクロペントラートやアトロピンの使用方法と副作用に関する配慮が求められます。
- 自覚的屈折検査:視力矯正が必要な小児に適した方法として、眼鏡装用者のオーバーレフラクションが行われます。
この手引きは、視力発達期の小児に対して適切な眼鏡処方を行うために参考とされる内容が示されています。
追記:清澤の追加での調査結果です
視力発達と眼鏡処方に関する重要事項を以下にまとめます。
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正常な視力発達:
- 乳児の視力は生後急速に発達し、ほとんどの子供は3歳頃に1.0の視力(20/20視力)に達します。早期の視覚刺激は重要で、健全な神経経路の発達を助けます。
- 両眼視(両目を使って奥行きや距離を把握する力)は生後3~4ヶ月頃から発達を始め、5歳頃までに成熟し、精密な奥行き感が得られるようになります。
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子供に見られる一般的な屈折異常:
- 近視(遠くが見えにくい):学齢期に多くみられ、遠くを見るのを補助するために眼鏡が処方されることが多いです。近視は通常、進行性であり、成人期初期に安定することが一般的です。
- 遠視(近くが見えにくい):幼児期に軽度の遠視はよく見られ、目の成長とともに減少する傾向がありますが、高度の遠視の場合、視覚負担を軽減するために矯正が必要です。
- 乱視:角膜の形状が不規則で、遠近ともに視力がぼやける原因となります。乱視はどの年齢でも発生し、矯正が必要です。
- 弱視(片方の目の視力が発達不良):視力発達が不十分なため視力が低くなることがあり、眼鏡やアイパッチによる治療が有効です。特に早期発見が重要です。
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眼鏡処方の適応:
- 機能的なニーズ:軽度の屈折異常があっても、明確に見えない、目の疲れがあるなどの問題がある場合、眼鏡が効果的です。
- 弱視予防:両眼からの均等な視覚入力が視力発達には不可欠で、眼鏡でそれを確保することが弱視予防になります。
- 視覚負担の軽減:高度な遠視や乱視がある子供にとっては、特に近くの物を見る際の負担を減らすために眼鏡が役立ちます。
- 近視の進行抑制:進行性近視には、二重焦点レンズやオルソケラトロジー、近視抑制用コンタクトレンズなどの特殊なレンズが用いられることもあります。
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眼鏡処方時の注意点:
- 客観的検査の重要性:幼い子供は自身の視力状態をうまく伝えられないため、レチノスコピーや自動屈折計などの客観的検査が欠かせません。
- 定期的な視力検査:成長とともに視力は変化するため、定期的な検査と処方の調整が必要です。
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眼鏡が発達に与える影響:
- 眼鏡は明瞭な視力を確保し、視覚発達をサポートします。年齢に応じた視覚機能の発達、学校での学習成績、そして子供の全般的な成長を支えます。
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