小児の眼科疾患

[No.3698] 小児の軽度な下瞼内反症(ないし下瞼睫毛乱生)と経過観察のすすめ

小児の軽度な下瞼内反症(ないし下瞼睫毛乱生)と経過観察のすすめ

10歳前後のお子さんで、下まぶたの一部がわずかに内側に巻き込まれている(下眼瞼内反症)、または睫毛の生え方が不規則(睫毛乱生)という状態が見られることがあります。このような場合、お子さんがまぶしさ(羞明)を訴えたり、目を気にして手で触ろうとしたりすることがあります。

  • 原因と背景

小児期の軽度な内反や睫毛乱生は、まぶたの発達がまだ不十分なことによって生じることが多く、特に顔面の骨格やまぶた周囲の筋肉のバランスが未成熟な時期に起こりやすい傾向があります。

また、このような状態は特別な病気というよりは、一時的な成長過程の変化として見られることが少なくありません。

  • 診断のポイント

眼科では、次の点を確認して診断を行います:

* 睫毛が角膜や結膜に当たっているかどうか

* 実際に角膜(黒目)に傷や濁りができていないか

* まぶたを手で引っ張ると正常な位置に戻るか

* 子どもがどの程度自覚症状(まぶしさ、痛み、異物感)を訴えるか

軽度であれば、診察時に角膜障害が見られず、睫毛もわずかに触れている程度であれば、緊急の治療を要さないと判断されることが多いです。

  • 対策と経過観察

お子さんがまぶたをよく擦ったり、目を気にして触るような場合は、一時的に点眼薬(防腐剤のない人工涙液など)を処方して角膜の保護を行うことがあります。また、症状が強い場合には、睫毛を部分的に抜去することもあります。

ただし、成長とともに顔貌やまぶたのバランスが整ってくると、自然に内反が軽減あるいは消失することもよくあります。特に実質的な視機能障害(視力低下や角膜傷害など)がない段階であれば、定期的な経過観察で十分と判断されることが多いです。

  • 手術の選択について

小児の下眼瞼の内反に対する手術は、原則として全身麻酔が必要となります。症状が軽度で、視機能に大きな支障がない場合には、無理に手術を急ぐ必要はありません。

一方、繰り返す角膜障害や強い羞明、睫毛の刺激による目の炎症が続くような場合には、将来的に手術を検討することもあります。保護者の方と相談のうえ、お子さんの成長のタイミングも踏まえて慎重に判断していきます。

 【まとめ】

軽度の小児下眼瞼内反や睫毛乱生は、成長とともに自然に改善する可能性があるため、多くの場合は経過観察で様子を見て構いません。まぶしさや異物感がある場合には、点眼や睫毛の処置などで対処しながら、定期的な眼科受診で角膜への影響がないかを確認していくのがよいでしょう。

 

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