小児の眼科疾患

[No.1101] 「坪田一男さん 坪田ラボ社長 なぜ医者から経営者に」記事紹介

眼科医清澤のコメント;「(いま聞く)坪田一男さん 坪田ラボ社長 なぜ医者から経営者に」という記事が朝日新聞に出ている。彼の生きざまをよく聞き取った記事なので要点を紹介したい。彼のモットーは(うまくいくからご機嫌なのではなく、)「ご機嫌だからうまくいく。」だという。彼は最初はブルーライトの害を唱え、のちにバイオレットライトの近視抑制効果を唱えた。しかし、(誰が反対の急先鋒であったのかはわからないが、)彼の関係したジンズ社が仕掛けたブルーカット眼鏡を世田谷区の小中学生に無償で配るというプランは日本眼科学会等の異論で躓いた。しかし、あくまでも彼はめげない。日本にも医療ベンチャー企業は数多あるが、それを資金集めだけではなく、今後の売り上げで収益を上げるという意味での軌道にのせるのは容易ではなさそうだ。それにしても、いつ話を聞いても前向きな人だ。

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写真・図版
坪田一男さん

 ■人生100年時代、「ごきげんだから、うまくいく」持論に近視の進行抑制めざす

 子どもの近視、働き盛りのドライアイ、高齢者の白内障緑内障。目の悩みは世代を問わない。その治療の革新をめざす「坪田ラボ」が今年、東京証券取引所に上場した慶応大医学部で長年研究を続けた坪田一男社長(67)が経営者としてめざすことは?

 (編集委員・中川透)

 株式上場に向け、会社の説明で投資家を訪ねた際、「そんなお年で事業を始めて、大丈夫ですか」と聞かれた。

 「いやあ何を言ってんの。僕はアンチエイジング(抗加齢医学)を研究していて、125歳まで生きるつもりなんだから」

 ■67歳でグロース上場

 慶応大を昨春に退官。その数年前から、新たな出発の備えを進めていた。医者としての人生が第1ステージならば、次は経営者として医療の世界で何かできないか。そんな思いを抱いていたころ、人生100年時代を掲げる英国のリンダ・グラットン教授の著書「ライフ・シフト」を読み、第2ステージへの挑戦の思いを強くした。

 60歳を過ぎていたが、「自分は125歳まで生きるんだからあと65年もあるよ」。毎週土曜日に慶応大のビジネススクールに通い、MBA(経営学修士)を取得した。

「人生100年時代で職業もマルチステージ化し、変化を楽しめるようになりました。卒業したら学問は終わりではなく、学問は自分の武器。知恵が大きな力になる時代です」

 経営者の道を志す一つのきっかけは、日本の貿易赤字の姿を知ったことだという。ーー大学の研究を新ビジネスにつなげる会社・坪田ラボを、東証グロース市場に上場させた。今年6月、67歳だった。

 ■科学×商業化=革新

 上場すると資金を集められる一方で、情報公開や投資家説明なども求められる。研究開発型企業には非上場も多い。取材で会社を訪ねた際に話を聞くと、ホワイトボードにこんな式を書いて説明してくれた。

 サイエンス(科学)×コマーシャリゼーション(商業化)=イノベーション

 自分は科学の世界で強みを持つが、革新を生むには研究を製品に結びつける商業化のノウハウもいる。事業戦略づくりや他社との連携が欠かせない。優れた人材を集めるため、上場をめざしてきたという。

 「サイエンスをやっていると、自分の発見を過大評価する。でも、その発見をどうやって売るの、という現実に直面します」科学と商業化の両方に強みを築き、企業との共同研究や開発契約を通して知的財産でかせぐ。そんな事業モデルで、ロート製薬、住友ファーマ、メガネ店を持つジンズホールディングスなどと連携する。会社の売上高は昨年度6億円超で、今年度に倍増をめざす

 ビジネスとする分野は、近視・老眼・ドライアイの三つ。まず事業化の期待が高い研究成果は、慶応大時代に論文発表した「バイオレットライト仮説」だ。波長360~400ナノメートルの紫色の光が、「近視の進行を抑える可能性がある」という考え方。ブルーライトとは波長が少し違い、自然の太陽光にも含まれている。

 「子どもの近視を心配する親御さんには、1日2時間の外遊びを勧めています。ただ、受験などでむずかしい時期もある。そこで、人工的に光をあてて近視の進行抑制をめざすメガネ型の医療機器を考えています」。初期の治験を通して「安全性や近視の進行抑制効果を確認した」との論文を報告した。より人数を増やして検証する次の段階の治験を進めている。世界全体で、近視の人は今の26億人から50年に48億人に増えるとの予測もあり、深刻な社会問題。防ぐ方法の確立をめざす。

 ■後に続く人の育成も

 先端の研究を進める一方で、同社が掲げるメッセージは「未来をごきげんにする」とわかりやすく、風変わりだ。

 ごきげんは自分の理念。「うまくいくから、ごきげん」ではなく、「ごきげんだから、うまくいく」が持論。抗加齢医学の研究で、元気な100歳以上の人に聞きとりを重ねた際、その思いを強めた。多くの人が朝の目ざめや食事などの日常に感謝し、ほがらかにくらしている。「ごきげんだから、長生きする」と考えた。

 ごきげんでいる工夫を尋ねると、答えが次々と返ってきた。

 夢中になれる好きなことをやる。ごきげんな人とつきあう。メディテーション(瞑想〈めいそう〉)をする。その日あったよいことを三つ書く。夜6時にはブルーライトをさえぎるメガネに変える。夜8時以降、スマホやパソコンを使わない。1日8時間寝る……。

 「ごきげん」な経営をめざしつつ、後に続く人の育成も目標とする。革新をもたらす企業を増やそうと、「ヘルスケアベンチャー大賞」を選ぶ活動にかかわる。東京都内で10月21日にあった最終審査会で、実行委員長としてあいさつした。「今はアイデア勝負の時代。お金や人、場所は後からついてくる。ご自身のアイデアをもとに、新しいベンチャーが出ることを願っています」ーーー

 無数の組み合わせを探し、まず試し、だめなら次につなげる。「これまでの日本の教育だと、失敗しないことばかりを考えてしまう。答えはたくさんあることを、もっと伝えないといけない」

 日本でもこうした世界的な医療関連ベンチャーが現れることを願う。「坪田ラボは子どもを近視から守った、といつか言われたいね」と夢を語る。「口にしないとわからないし、みんなに協力してもらえない。言い続けていると何とかなるんだよ」。笑みがこぼれた。

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 つぼた・かずお 1955年、東京都生まれ。慶応大医学部卒業後、米ハーバード大留学、国立栃木病院眼科医長、東京歯科大教授などを歴任。2004~21年まで慶応大医学部教授として近視や老眼の研究・治療を続けた。19年2月から坪田ラボ社長。抗加齢医学の研究者としても知られ、「ごきげんな人は10年長生きできる」(文春新書)、「アンチエイジング・バトル最終決着」(朝日新書)など著書多数。

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清澤注 ※1;https://www.medical-confidential.com/2021/06/19/post-12493/

紫光透過眼鏡が近視の子供の眼軸伸展に及ぼす影響:論文紹介

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