答:
進行性外眼筋麻痺(Chronic Progressive External Ophthalmoplegia:CPEO)は、多くの場合ミトコンドリア遺伝子の異常によって起こる病気です。ミトコンドリアは細胞の「エネルギー工場」であり、独自のDNA(mtDNA)を持っています。このDNAは母親からのみ子どもに受け継がれるという特徴があります。つまり、父親のミトコンドリアは受精時にほとんど子に伝わらないため、母親の遺伝子が病気の遺伝に関わるのです。
遺伝の仕組み
進行性外眼筋麻痺の多くは、「ミトコンドリアDNA欠失型」や「点変異型」に分類されます。
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欠失型(mtDNA deletion):通常は体細胞で後天的に起こるため、母から子へはほとんど遺伝しません。
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点変異型(mtDNA mutation):母系遺伝をします。母親が変異を持っている場合、卵細胞ごとに変異の割合(ヘテロプラスミー率)が異なるため、子どもにどの程度発症するかは確率的にばらつきがあります。
女性患者から生まれる子どものリスク
母親がCPEOを発症しており、それがミトコンドリアDNAの変異による場合:
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男女ともに変異したミトコンドリアDNAを受け継ぐ可能性があります。
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ただし、発症の有無や重症度は、受け継ぐ変異率(ヘテロプラスミー率)によって異なり、
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子が同程度に発症することもあれば、
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軽症あるいは無症状にとどまる場合もあります。
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一般的に、発症確率を明確な「何%」と表すことは困難ですが、母親が明らかにmtDNA変異型CPEOの場合、子どもへの遺伝可能性は理論的に100%(ただし発症は確率的)と考えられています。
男性患者の場合
男性のCPEO患者がミトコンドリアDNA変異によって発症している場合でも、精子のミトコンドリアは受精後に消失するため、子どもに遺伝することはありません。
したがって、父親が患者で母親が正常な場合、子どもがCPEOを発症することはありません。
日本での正式な遺伝相談が可能な医療機関
CPEOを含むミトコンドリア病の遺伝カウンセリングは、大学病院の遺伝科や神経内科で行われます。代表的な施設として:
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国立精神・神経医療研究センター病院(東京都小平市):ミトコンドリア病外来・遺伝カウンセリング外来あり
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東京大学医学部附属病院 遺伝子診療部
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慶應義塾大学病院 臨床遺伝センター
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大阪大学医学部附属病院 遺伝子診療部
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名古屋大学病院 臨床遺伝診療部
これらの施設では、血液中のmtDNA解析や母系親族への検査も行い、遺伝の可能性・リスク・妊娠への影響について丁寧な説明を受けることができます。
まとめ
進行性外眼筋麻痺の多くはミトコンドリア遺伝子異常が原因で、母親から子へ伝わる可能性がある病気です。
女性患者が母親になる場合、子ども(男女とも)に病気を伝える可能性はありますが、症状の出方はさまざまです。男性患者からは遺伝しません。
家族計画を考える際には、ミトコンドリア病に詳しい遺伝専門医や臨床遺伝士による相談を受けることが大切です。
清澤のコメント:上この答えを知りたい場合には親となる患者の遺伝子型を欠失型(mtDNA deletion)か、点変異型(mtDNA mutation)かを調べないと遺伝相談ができないという事でしょうか?上の文を信ずるとすれば、発端者の母が症状を持っていなければ欠失型、母親が持っていれば点変異型という参考になるかもしれません。
★ 発端者の母親が発症していなければ、ほぼ欠失型(遺伝しない)という事が出来るのでしょうか?
ChatGPT:とても良いご質問です。
「進行性外眼筋麻痺(CPEO:Chronic Progressive External Ophthalmoplegia)」が母親に発症していない場合に、発端者が“欠失型”である可能性が高いか?という点を、遺伝学的観点から整理します。
1. CPEO の遺伝形式の基本
CPEO は、大きく2群に分けられます:
分類 | 遺伝形式 | 代表的変異 | 発症様式 |
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(1) 欠失型(単一大規模 mtDNA 欠失) | 多くは散発性(非遺伝性) | mtDNA の数千塩基にわたる大欠失 | 母親は発症していないことが多い |
(2) 点変異型(tRNA変異や複数欠失) | 母系遺伝(母親→子)または核遺伝子変異による常染色体劣性/優性遺伝 | 例:mtDNA A3243G(MELAS型など)、POLG変異など | 母親も軽症〜無症候例として発症していることが多い |
2. 欠失型(single large-scale deletion)の特徴
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ほとんどが de novo(新生変異) で、母親の卵子には存在しません。
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筋肉など特定の臓器にのみ欠失が存在する「体細胞性モザイク」です。
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したがって、母親が無症状(特に筋力低下や眼球運動障害がない)であれば、欠失型である可能性が非常に高い と判断されます。
→ 実際に、欠失型CPEOの多くは孤発例(sporadic)であり、家族内再発はほとんど見られません。
3. 点変異型の特徴
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mtDNAの点変異(tRNAなど)の場合、母系遺伝で子に伝わる確率が高いです。
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ただし母親は不顕性(軽い筋痛・眼瞼下垂・軽度の糖尿病など)で見逃されることもあります。
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この場合、母親が同じ変異を持っているかを確かめるには血液・尿・筋肉での遺伝子解析が必要です。
4. 結論:母親が発症していない場合の推定
✅ 母親が全く無症状で、CPEO発端者が孤発的に発症している場合は、欠失型である可能性が極めて高い
(おおむね 80〜90%以上と考えられます)
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欠失型は母親からの遺伝ではなく、発端者で新たに生じる変異によるものが大多数です。
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点変異型やPOLGなどの核遺伝子変異による場合には家族歴があることが多いです。
5. まとめ
母親の症状 | 発端者の遺伝型の推定 | 備考 |
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母親も発症・軽症例あり | 点変異型、または核遺伝子変異型の可能性あり | 母系遺伝を疑う |
母親が完全に無症状 | 欠失型(sporadic)である可能性が高い | 再発リスクは低い |
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