社会・経済

[No.556] 「中途半端な妥協はしない」 ウクライナの元参謀本部将校が語るこれまでの戦いと今後 [2022/04/25 18:00]

清澤のコメント;ウクライナ軍の元幹部でスポークスマン役の人のインタビューが掲載されています。ロシア軍の持つ弱点など本質的なことが記載されていますので要点を再録してみます。様々な見方がありますが、現況ではこれでよいでしょう。

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https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000252688.html

 ロシア軍は4月22日、ウクライナでの「特別軍事作戦」が第二段階に入ったことを明らかにした。第二段階は東部ドンバス地方と南部を完全制圧することを目標にしている。
 こうした状況を受けて、ウクライナ軍の実質的なスポークスマン役を務めるオレグ・ジダーノフ(56)が、ウクライナが善戦している要因、ブチャで起きた惨劇の背景、さらには今後の見通しなどについて語った。

◆ロシア軍がウクライナ国境に兵力を集中した時、この侵攻は回避できると思ったか?
 わたし自身はロシア軍の侵攻は回避できると思っていた。春の深い泥濘期にウクライナ国境を越えるのは冒険だからだ。しかし、彼らはウクライナ軍に対する誤った評価の上に作戦を組み立てていた。電撃作戦でアスファルトの道を進軍すれば、ウクライナ中部までも簡単に到達できると思っていたのだろう。
◆プーチン大統領はどの程度の時間で計画が成功すると読んでいたのか?
 ロシアは、96時間、つまり4日で目標を達成できると読んでいた。まず空挺部隊を入れて空港を押さえ、その後、1個師団を投下する計画だった。ゼレンスキー大統領と政府首脳を押さえ、傀儡にヤヌコーヴィチ(※ロシア寄りの元大統領)を立てようとしていた。
◆ロシアはウクライナ全土を押さえようとしているのか?
この戦争のロシアの政治的、戦略的な最終目標はウクライナ全土の制圧であり、ロシアがウクライナを政治的に飲み込むことだ。これは2014年に立てられた計画で、現在もそのままだ。「非軍事化」「非ナチ化」「安全の保証」などは、ウクライナを政治的にロシアが飲み込むことだ。2014年の「マイダン革命」を、ロシアはずっと「軍事クーデター」と呼んできた。
◆ウクライナ軍はロシアの侵攻に準備はできていたのか?
 準備は出来ていた。この8年でウクライナ軍は防御、攻撃両面でNATO流の最先端の方法論を学んだ。特に、この3年、毎年の訓練回数はウクライナ国内だけでも10回を超え、NATOの保有するあらゆる武器を扱ってきた。そしてカギとなるのが、ウクライナ軍幹部の交代だ。ウクライナ東部で実戦経験を積んだ若い将校が幹部になった。
◆侵攻初日からウクライナ軍は見事に戦っていたようにみえるが。
 最初期段階では、侵攻してきたロシア軍の装甲車両から町を防衛できるかどうかが、わたしの一番の気がかりだった。
◆プーチンが電撃戦に失敗した一番の理由はなにか?
 第一は、予想もしていなかったウクライナ軍の反撃力、抵抗だろう。そしてウクライナ軍幹部の準備態勢だ。彼らはロシア軍がウクライナ国境に入って数キロの地点で、早くも敵戦車を破壊した。

◆ロシア軍の質は?
 ロシア軍は、ウクライナ軍より劣る。箸にも棒にもかからないが、無理もないことだ。徴集兵で、訓練を終えてすぐベラルーシの演習に駆り出され、そのままウクライナに投入されたのだから。概して、ロシア軍の質は低い。
◆ロシアにはまだウクライナに投入できる兵力はあるか?
 ロシアの陸軍の兵力は40万人だが、実際に投入できるのは28万だ。あとは欠員だ。ここから空挺部隊、ミサイル部隊、これに第201基地、第102基地などロシア南部に駐留する軍を除くと、残るのは兵力28万の半分くらいだ。しかもその大部分は徴集兵だ。
 ロシアは2019年に国家親衛隊を作るという戦略的な過ちを犯した。親衛隊の兵力は、常備軍から引き抜いたものだ。

◆ロシア側の損害は大きいか?
 当初ウクライナに侵攻してきたのは、15万から17万の兵力だったが、キーウから撤退した時期には、死者は約1万8000人、このほか負傷者が約5万5000人と見ている。損傷率が50%を超えると、戦闘意欲が極端に落ちると言われている。
◆ブチャやボロディアンカではいったい何が起きたのか。ウクライナを恐怖に陥れようと意図的にやったのか?
 ブチャで市民を殺害した兵士たちは、ああいうふうに教育されてきたのだ。兵士たちが育った環境そのものが強制収容所のようなものだ。奴隷になって拷問を受けるか、出世して拷問する側にまわるか、という教育だ。キーウ近郊の町などは生活水準が高い。兵士たちには階級的憎悪があったのだろう。将校にしても同じだ。
 3つのカテゴリーがあって、「銃殺すべき者」「強制収容所に送る者」「追放する者」という三つのカテゴリーがある。特務班は住民を選別して銃殺した。空き家に入って手あたり次第に物を盗み、アパートに人がいればその場で射殺するか、外へ連れだして射殺した。これは野蛮な軍隊のシステムになっているのだ。

◆今後のプーチンの狙いは?
 プーチンが権力の座にいる限り、国家としてのウクライナと民族としてのウクライナ人をこの地上から消し去るという考えは変わらないだろう。
◆欧米の軍事支援はうまくいっているか?
 うまくいっている。砲撃訓練は2週間もあれば十分だ。航空兵は訓練に半年かかるが戦車や装甲車、砲撃の訓練は一番簡単だ。現在の戦闘でウクライナ軍が勝てば、反攻に出て、ウクライナ東部を取り戻し、クリミアの反転攻勢可能。ロシアが負けた場合は、ロシアの政治状況に反映するだろう。プーチンとその取り巻きが権力を保てるとは考えられない。
◆今後の予想は?
 ロシア軍の新たな攻撃は今後7日間から14日間続くだろう。本来なら、第一撃で最大の攻撃力を発揮し、敵の戦意をくじかなければならない。ロシア軍は大規模攻勢をかけられない状態。予備役の投入などで、本格的な強化ができていないのだ。
 ウクライナ軍は今後2週間はロシア軍の潜在的攻撃力を削ぐために、積極的な陣地戦に徹する。ロシア側の攻撃力が尽きたところで、反転攻勢について考えることになる。
◆ウクライナの諸都市への攻撃は直視できないほどひどいが、ロシア軍はこうした攻撃を今後も続けると思うか
 最後の最後までロシア軍はこうした攻撃を続けるだろう。米国がレンドリース法(武器貸与法)を改正して、パトリオット・ミサイルや重火器を提供しない限り、ロシアのミサイル攻撃を止めることはできない。
◆ウクライナ側は、ベルゴロドでやったようなロシア内の都市の空港や石油基地などのインフラを攻撃する可能性はあるのか?
 あれはロシア側がやった攻撃だ。ロシア側には対テロ対策がらみの目論見がある。ロシア側には時間が足りない。隣接州で動員令をかけるにしても、予備役を含めて戦闘可能な状態にもっていくには3カ月かかる。それまでにわれわれは戦争を終わらせるだろう。
◆巡洋艦「モスクワ」はウクライナ軍が沈めたのか?
 その通りだ。「モスクワ」の防空システムを逆手にとった作戦を展開したため、ウクライナ軍のミサイルは問題なく巡洋艦に着弾した。
◆戦争は長く続くのか?
 最低でもあと数カ月は続くだろう。曖昧な停戦協定などが結ばれれば別だが。ロシアとは協定を結んではならない、とわたしは思う。中途半端な譲歩や妥協は禁物だ。
ANN 元モスクワ支局長 武隈喜一(テレビ朝日)

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