清澤のコメント:従来は網膜変性の形から、変位が疑われる特定の遺伝子を一つずつ調べる 方法(Sanger法))が用いられていた。しかし現在では、次世代シークエンサーを用い て多数の既知の遺伝子を網羅的に解析する方法がある。この場合、異常な遺伝子群を一つのセットとして網羅的にその異常部位を探す方法が行われるようになったようだ。しかし、疾病の原因になり得る新たな変位の可能性のある遺伝子の捜索においては、このパネルを利用すると、検索からは外れてしまう事にも注意が必要かもしれない。都内では国立東京医療センターなどがその施行が可能な施設なのであろうか?
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日本の眼科 NEWS & TOPICS 今月の一話(2024年7月号から)
遺伝性網膜ジストロフィにおける 遺伝学的検査のガイドラインについて
近藤寛之先生(産業医科大学眼科学教室)の要旨は
- 遺伝性網膜ジストロフィの遺伝学的検査ガイドライン:産業医科大学眼科学教室の近藤寛之氏による、遺伝性網膜ジストロフィ(IRD)に関する遺伝学的検査のガイドラインについての解説。遺伝性網膜ジストロフィ(inherited retinal dys trophy: IRD)は遺伝子の異常が原因となる家族性 の網膜疾患の総称。RPE65遺伝子 異常の診断に必要な遺伝学的検査が承認された。これはこの遺伝子単独ではなく,主要なIRDを網羅的に診断するためのパネル検査と呼ばれる検査である。日本眼 科学会雑誌に「遺伝性網膜ジストロフィにおける遺 伝学的検査のガイドライン」として掲載された。
- 遺伝子治療の進展:RPE65遺伝子異常を有するLeber先天盲の遺伝子治療が承認され、関連する遺伝学的検査も承認された。
- 遺伝学的検査の方法:Sanger法や次世代シークエンサーを用いた網羅的な解析方法が重要であり、IRDのように原因遺伝子が多数存在する場合に有効。
- 患者への対応とカウンセリング:遺伝学的検査の結果の解釈と開示にはエキスパートパネルが関与し、遺伝カウンセリングが推奨されている。利益と不利益について十分説明を受けた上で自らの意思で検査を「受ける」か「受けな い」か選択できるようにすることが必要。また、検査によって生命に関わるバリアントが意図せず検出される可能性もある。
- ポイントは、遺伝子医療の進歩と遺伝診断方法の進化に伴い、IRD患者が遺伝子医療の恩恵を受ける機会が増えることを示している。
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