本日のセミナーにおける清澤の聴講印象メモ
清澤の感想:東京医療センターは私の診療所からも真北に2キロほどと近く、医師の陣容もしっかりしていることが窺われました。患者さんの希望があれば、従来も患者さんを紹介していましたが、今後も一層、患者さんをお願いしたいと思いました。
演題1:「角結膜の治療の実際3」藤井祥太先生(東京医療センター眼科)
角膜の中庸とは:過不足なく調和していることを指します。健康な角膜を維持するためには、涙液が十分であり、眼瞼も保全され、結膜にはムチンが十分であることが必要です。
乱される原因:内的要因(アトピー、加齢、自己免疫疾患など)と外的要因(外傷、手術、薬剤など)があります。
内的要因に伴う重症例:
リウマチ:プレドニン内服やヒュミラ(アダリムマブ)の使用、血漿交換も可能です。
アルカリを顔面に浴びた例:眼表面のヒエラルキーは角膜、結膜、皮膚の順です。角膜移植のほか、自家培養口腔粘膜上皮や人工角膜移植もできます。
発達障害があり、繰り返し外力が加えられた例:触らせないことができれば、自然回復力は強いです。
その他の症例:
セレスタミン(ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)は、副腎皮質ホルモンと抗ヒスタミン成分を含む医薬品です。
十分な内皮密度が必要です:白内障手術でデスメ膜除去が起きてしまった白内障例は内皮移植をしました。
演題2:「緑内障の治療」矢島潤一郎先生(東京医療センター眼科)
緑内障の手術検討のタイミング:
– 眼圧不良
– 視野欠損の進行
– フルメディケーション
– 薬物アレルギー
濾過手術:
– レクトミー
– チューブシャント(プレートのあるアーメドとプレート無しのエクスプレス、プリザーフロ)
– i-Stent
– SLTなど
眼圧が正常なら:ロトミー
10 mmHgなら:基本はレクトミーで、濾過手術を選ぶ
硝子体術後:エクスプレスやアーメドを選ぶ。難治例にもアーメドを選ぶ。
清澤追記:プリザーフロとは小さなチューブ状の医療機器で、強膜弁、虹彩切除術が不要で、眼圧下降効果が得られる。濾過手術系の低侵襲緑内障手術(MIGS)で、手術による眼の負担が少ない。プリザーフロは、濾過手術の一つで流出路手術(トラベクロトミー)に比べて、眼圧下降効果が強いメリットがあるということのようです。
視野変化の目安:
– 中心視野の弱い人には直後の高眼圧の可能性を避けるためロトミーをしない
– 中期や末期ならレクトミーを選ぶ
術式の使い分け:
– 可能ならレクトミー
– 硝子体切除後はエクスプレス
– 難治例にはアーメドバルブを選ぶ
清澤追記:アーメド緑内障バルブは、緑内障チューブシャント手術に使われる新しい緑内障術式の一つ。バルブを結膜下に挿入し、その細いチューブを眼内に挿入する。このチューブを通して房水流出を促進し、眼圧を下げる。バルブには伸縮性のあるメンブレンバルブが採用されており、房水の排出を促すと共に、メンブレンの張力が常に流量を調整するとされていました。
演題3:「最近のトピックス 網膜剥離と黄斑前膜」秋山邦彦先生(東京医療センター眼科医長)
①最初に紹介された文献:
変視に基づく網膜上膜手術の最適タイミングの客観的・定量的推定
著者:Yuki Kanzaki 他 DOI: 10.1097/IAE.00000000000003401
要約:
目的:網膜上膜 (ERM) における変視症の客観的かつ定量的なバイオマーカーを確立し、ERM手術の最適なタイミングを決定すること。
メソッド:レトロスペクティブにERMを有する172眼をレビューした。ERMによる接線方向牽引による網膜のひだは、en-face光干渉断層撮影法によって視覚化された。傍中心窩内の網膜襞の最大深さ (MDRF) を定量化した。変視はM-CHARTSによって定量化された。ERM手術後の網膜血管間距離の変化と術前の網膜襞の総深さを、顔面光干渉断層撮影法と光干渉断層撮影血管造影法を用いて定量化した。
結果:術前と術後6か月の術前MDRFスコアとM-CHARTSスコアの間に有意な相関が観察された (それぞれr = 0.617および0.460; P < 0.001)。また、ERM手術後の網膜血管間の距離の変化と術前の網膜襞の総深さにも有意な相関があった (r = 0.471; P = 0.013)。M-CHARTSスコアが0.5であった術前MDRF値は、手術前および6か月後にそれぞれ69μmおよび118μmであった。
結論:MDRFは、ERMにおける変視症の客観的かつ定量的なバイオマーカーである。患者の視力の質を維持するために、術前のMDRFが69μmから118μmの範囲である場合にERM手術が行われることが望ましい。
清澤の注記:要するに、視力も低く、変視も強い場合は、手術を行っても改善が難しいことがあるというお話。。話に出てきたM-CHARTSスコアは、イナミで市販されている変視を定量化する紙製のチャート(約3万円)です。
②網膜剥離の治療法としてのPneumatic retinopexy:(参考記事:Pneumatic Retinopexy – EyeWiki (aao.org))
この方法はHilton法として知られていますが、日本の恵美先生もほぼ同時期に行っていました。このガスを注入する方法による網膜復位率は88.9%で、硝子体手術の93.2%と大差ありません。単裂孔の場合、復位率はそれぞれ85%と91.6%です。日本人の空気法の成功率が高いのは、日本人が律義にプローンを行うからだと考えられます。空気復位法は、網膜表面の最終的な歪みが少なく、術後の変視が少なくできるという別のメリットもありますので、現在この方法を執る術者は少ないがこの方法を勧めて行きたいと話されました。
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以上がセミナーの内容です。これを参考に今後の診療に役立てたいと思います。
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