糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・網膜疾患

[No.4045] 中年の近視のある方に多い「飛蚊症」と「光視症」

中年の近視のある方に多い「飛蚊症」と「光視症」

40代から50代にかけて、特に軽度から中等度の近視がある方の中に「視界に糸くずや虫のような影が見える」「暗いところでピカッと光が走る」といった訴えをされる方が増えてきます。これらの症状はそれぞれ 飛蚊症(ひぶんしょう)光視症(こうししょう) と呼ばれ、多くの場合は加齢に伴う自然な変化に関連していますが、中には重大な病気のサインである場合もあります。ここではその原因、診断、治療について解説します。


1. 飛蚊症(ひぶんしょう)とは

飛蚊症は「蚊が飛んでいるように視界に小さな黒い点や糸状の影が見える」状態です。白い壁や青空を見たときに気づきやすく、目を動かすと影も一緒に動いて見えます。

主な原因

  • 硝子体の濁り:眼球の中を満たすゼリー状の物質(硝子体)が、加齢や近視のために変性し、小さな濁りを生じます。

  • 後部硝子体剥離:年齢が進むと硝子体が縮んで網膜から剥がれ、濁りが視界に映り込みやすくなります。

  • 網膜裂孔や網膜剥離:稀ですが、網膜に穴(裂孔)ができたり、網膜が剥がれる病気が原因となることもあります。この場合は早急な治療が必要です。


2. 光視症(こうししょう)とは

光視症は「暗いところで急にピカッと稲妻のような光が走る」といった症状です。

主な原因

  • 硝子体が網膜を引っ張ることによる刺激:硝子体が縮む際に網膜を物理的に牽引し、視細胞が刺激を受けて光を感じます。

  • 網膜裂孔や剥離:強い光視症が急に増えたり、飛蚊症が同時に悪化した場合は網膜裂孔や剥離の可能性があり、特に注意が必要です。


3. 診断の流れ

飛蚊症や光視症を訴えた場合、眼科で以下のような検査を行います。

  • 視力検査:視力低下の有無を確認。

  • 眼底検査(散瞳検査):点眼で瞳を広げ、網膜や硝子体を詳しく観察します。網膜裂孔や剥離の有無を調べる重要な検査です。

  • OCT(光干渉断層計):硝子体や網膜の断層構造を確認できます。

  • 眼底写真:経過観察の記録として有効です。


4. 治療法

症状の原因により、対応は大きく異なります。

  • 生理的な飛蚊症・軽度の光視症

     硝子体の加齢変化によるものであれば、特別な治療は不要です。しばらくすると症状に慣れたり、濁りが視界の中心から外れて気にならなくなることもあります。

  • 網膜裂孔がある場合

     レーザー光凝固術で裂け目の周囲を固め、網膜剥離を予防します。外来で行える比較的短時間の処置です。

  • 網膜剥離が進行している場合

     手術(硝子体手術や強膜バックリング術)が必要になります。早期に治療を行わなければ失明に至る危険があるため、迅速な対応が求められます。


5. 注意すべきサイン

飛蚊症や光視症があっても大半は良性ですが、以下のような症状がある場合は 早急に眼科受診が必要 です。

  • 飛蚊症の数が急に増えた

  • 光視症が繰り返し強く出る

  • 視野の一部が欠ける、黒いカーテンがかかるように見える

  • 急激な視力低下がある

これらは網膜裂孔や網膜剥離の前兆・初期症状の可能性があります。


まとめ

中年のやや近視のある方に多い「飛蚊症」と「光視症」は、多くは硝子体の加齢性変化によるもので心配ないことが多いですが、網膜裂孔や剥離といった重篤な病気が隠れていることもあります。

自己判断せず、症状が出たらまず眼科で検査を受けることが大切です。早期発見・早期治療ができれば視力を守ることが可能です。「急な変化」に気づいたときには、迷わず受診するよう心がけましょう。

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