糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・網膜疾患

[No.651] 眼科編(14) 糖尿病網膜症(1)日本の糖尿病患者の15%が患う目の病気

眼科編(14) 糖尿病網膜症(1)日本の糖尿病患者の15%が患う目の病気

  • 公開日:20220610

 新型コロナによる巣ごもり生活で血糖値が上がり、糖尿病予備群や糖尿病を発症する60代以上が増えている。そこで注意したいのが糖尿病網膜症だ。どんな病気か? 自由が丘清澤眼科の清澤源弘院長に聞いた。

「年単位の高血糖が原因で目の奥にある網膜の微細血管が障害を受けて、目がかすんだり、視力が低下する病気です。中途失明原因の上位に数えられるだけに、中高年が気をつけなければならない目の病気です」

 日本人の糖尿病患者のうち約15%が罹患しているといわれ、推定患者数は約140万人とされる。年間約3000人の失明を引き起こし、2015年度の視覚障害の実態調査で成人の失明原因疾患の第3位となっている。

「目立った症状がないため、初期ではほとんどで気づかず、症状を自覚したときには病期が進んでいたというケースが少なくありません。それでも、初期に網膜の損傷した血管からの出血により、視野全体に斑点や糸くずのようなものが表れる『飛蚊症』を発症することがあります。そのほとんどは自然に消えますが、糖尿病を自覚してなくても飛蚊症、かすみ目、そのほかの視力喪失を経験し、医師に確認した方がいいでしょう」

 この段階からは、網膜の外観が変化する可能性があり、眼底検査で検出されるようになる。

「糖尿病網膜症には進行の度合いによって呼び方が変わります。網膜に出血や斑点などが生じる『非増殖糖尿病網膜症』と網膜に新しい血管や増殖膜ができる『増殖糖尿病網膜症』です。治療していない中等度の非増殖型では、網膜に黄斑浮腫などができ、視力低下を起こす可能性があります」

 さらに進行すると、貧血になった網膜は血管増殖因子を分泌して新しく弱い血管を生成する。

「これらの新しい血管は、網膜の内面に沿って成長するだけでなく、目の中心を満たすゼリー状の硝子体内にも伸展します。新生血管はもろいので、血液成分が漏れて出血する可能性が高く、やがて瘢痕組織を生成し、それが収縮して網膜剥離も起こします」

 こうなると治療は難しくなり、場合によっては失明する。糖尿病が指摘されている人は自覚症状がなくても年に1回は包括的な目の検査を受けることが重要だ。

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