理研、「10年ルール」で97人雇い止め チームリーダーの研究者も:という記事が出ています。かつての日本では研究者は花形であり、眼科医でも視覚野研究をしようと研究への道を選んで勇んで理化学研究所に転職してゆく仲間をしばしば見ました。チームリーダーと言えば、いっぱしの研究者で、サイエンスやネイチャーなどにも掲載された論文を持っているような成果を上げている人も少なからずいました。しかし、最近の日本の科学や技術の研究者が置かれた地位は非常に不安定で、中途で研究者としてのキャリアを断念した人もいました。この理研の例は単にその一例であろうと思われます。自分が優れた成果だと主張してもそれがどこまで認められるかは不詳です。また、研究者は殆ど経済的に恵まれず、年に数回教室の研究費で学会旅行に参加できる程度の利得しか無いのはたしかです。経験を積むと、研究は続くでしょうが、後輩が持つであろう革新的ないアイデアは尽きても来るかもしれません。其処には労働者としての権利が主張できるような環境はなく、今後もさらに厳しくなることが予測されます。つまり、企業に勤めるサラリーマンに比べれば、研究者の地位はまことに不安定であると言わざるを得ないでしょう。しかし、世界的に見れば、日本では雇用者に対する雇用側の解雇権は弱く、職員に落ち度がなければ解雇は困難という状況です。今後、日本が世界に復権を果たしてゆくにはそこから変えてゆくことが求められているのかもしれません。
降格して理化学研究所に残った研究者のひとりは「研究の評価、進捗(しんちょく)の検討もなしに10年で機械的に乱暴に雇用終了を強行した。雇用にとどまらず日本の科学技術の問題だ」と語った=18日、東京・霞が関
日本を代表する研究機関の理化学研究所(本部・埼玉県和光市)で今春、10年を超える有期雇用を認めない「10年ルール」の結果、雇い止めにあった研究者や技術職員が計97人にのぼることがわかった。理研労働組合が18日、厚生労働省で会見を開いて明らかにした。全国の大学や研究機関で計数千人が雇い止めになる可能性が指摘されていたが、機関ごとの実数が公表されたのは初めて。 2013年4月に施行された改正労働契約法などにより、有期雇用が通算10年を超えた研究者は無期への転換を求められるようになった。雇う側はこの求めを断れないため、人件費削減などを背景に、通算10年を超える直前に契約を打ち切られる研究者が多数出ることが懸念されていた。 理研の研究系の職員はもともと有期雇用が約8割を占める。16年には、13年にさかのぼって雇用期間が通算10年を超える契約はしない、と就業規則を変更した。昨年9月にこの上限の撤廃を発表したが、今年3月末で通算10年にあたる研究者らが203人いることがわかっていた。 労組が理研側に3月末以降の実態を聞き取ったところ、このうち97人が4月以降の雇用を結べず、理研を退職したことがわかったという。大学の教授職に相当する、チームリーダーと呼ばれる研究者も複数いた。 一方、理研は一部の研究者については「理事長特例」などとして4月以降も計106人の雇用を継続した。中には降格された上で、雇用継続となった研究者もいる。 このほか、リーダーの雇い止めで研究チームが廃止になることで、雇用契約が終わる研究者らも177人おり、別のチームなどに移籍できなかった87人が理研を去った。
朝日新聞社
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