「DNAから見た縄文人」安達登 山梨大学教授の抄録:
「関東艮陵だより」という東北大学関東艮陵(医学部)同窓会(7月6日)のお知らせが届きました。
関東艮陵同窓会における今回の特別講演のうちの一題は「DNAから見た縄文人」安達登 山梨大学医学部法医学講座教授だそうです。大学のホームページ(教授 安達登|山梨大学大学院医学工学総合研究部法医学講座 (yamanashi.ac.jp))を拝見すると、先生は「血縁推定に関する研究」を進めておられます。特に古人骨においては経年変化によるDNAの変性のため、1つの細胞に2コピーしか存在しない核DNAの分析は困難。これに対し、ミトコンドリアDNAは細胞内に数百~数千コピーも存在するため、古人骨においても解析できる確率が高くなる。そこで、解析の中心に核DNAではなく、ミトコンドリアDNAを据え、研究を進めています。:という事でした。
御講演の抄録は以下の通り:
近年縄文人についての遺伝子分析が進み、この集団が世界的にみても極めて独特な遺伝的特徴をもっていることが明らかになってきた。 例えば、ミトコンドリアDNAのハプログループ(遺伝子型の系統掛上の名称)では、N9bとM7aの2種類が突出した高頻度であることが分かった。両者に共通する特徴は、分布地域が日本の周囲にほぼ限局し、縄文文化のそれとおおよそ一致することである。個別の特徴としては、N9bは北日本の縄文人に50%以上の高頻度でみられるが、南下するに従って頻度が減少してゆく。一方、M7a は北海道で2%以下と頻度が低く、東北地方において30%以上に頻度が急上昇し、西日本では約80%がこのハプログループを持つことが分かってきた。このN9bとM7aの他、日本列島以外では全く観察されないN9のサブタイプも存在するなど、ミトコンドリアDNAからみた縄文人は極めて独特であり、かつ、日本列島内での地域差も大きかった。 核ゲノム分析においても縄文人は遺伝的に極めて特異的で、世界のどの人類集団とも大きく異なることが証明された。しかし、ミトコンドリアの場合と異なり、遺伝的地域差はほとんど見られなかった。これは縄文人のゲノム分析の結果をゲンダイ人集団と比較したことが原因と考えられ、縄文集団のみを、個体数、分析地域を増加させて比較すれば、地域差についても明らかになってくることが期待された。
清澤のコメント:縄文人と弥生人の血縁的な関係は最近のネット上でも大きな関心を集めています。そのあたりをこのように地道に研究しておられる先生がおられたことに驚きました。自分が主体で運営していた南砂町の清澤眼科医院の時代には関東艮陵会の会計幹事もお引き受けして積極的に参加しておりましたが、自由が丘に移るにあたっては幹事も代わっていただき、すっかりご無沙汰しています。同窓会事務も私がかかわっていた当時とは変わって、専門業者に委託されたようです。
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