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[No.2298] 中澤満先生(弘前大眼科前教授)ご逝去:

日本眼科学会雑誌(日眼会誌)128巻1号が届けられました。驚いたのは、巻頭に出ていたのが中澤満先生への弔辞であったことです。彼は1980年東北大学を卒業で、弘前大学教授を全うされましたが、東北大学医局では私の2年後輩で、机を並べた仲間でした。彼は非常に優秀な方でした

Am J Ophthalmolに1983 10 月;96(4):435-8に、早くも後房眼内レンズ移植後の偽水晶体眼における見かけの調節という論文を大槻潔先生とともに筆頭演者として発表しました。(DOI: 10.1016/s0002-9394(14)77905-x)

その当時の抄録を見ますと、

後房眼内レンズの移植後の42の偽水晶体眼(患者34人)における見かけの調節を測定した。見かけの調節力の平均は、2.03 +/- 1.03 ジオプトリーでした。対照として使用した 16 個の有水晶体の平均調節力は 2.91 +/- 1.29 ジオプトリーでした。瞳孔の直径は見かけの調節において最も重要な要素であるようであり、瞳孔が小さいほど見かけの調節は大きくなる。見かけの調節力は瞳孔径に反比例したしかしながら、見かけの調節と矯正視力、屈折異常、角膜乱視、または眼軸長との間には相関関係はなかった。見かけの調節と前房の深さとの間には負の相関関係があった。:とされています。これは、最近人工水晶体やコンタクトレンズで話題にされるEDOFという概念に通じるものであったようです。拡張焦点深度 (EDOF または EDF)、または拡張視野範囲というのは、老視矯正 IOLの治療で最近登場した新しい技術です。老視の治療に使用される多焦点眼内レンズ (IOL) とは対照的に、EDOF レンズは、単一の細長い焦点を作成することによって機能し、「視野範囲」または「焦点深度」を強化します。EDOFの 意味としては、米国眼科学会は、拡張焦点深度 (EDF) IOL の定義とテストに関するコンセンサス ガイドラインを発表しています。拡大された焦点深度 IOL を定義する重要な原理は、焦点深度を高める、単一の連続した細長い焦点です。理想的な EDOF IOL は、平面から -1.5D までの広範囲にわたって鮮明な焦点を提供し、患者に優れた遠方視力と中間視力を与えます。

その後も、中澤満先生は、東北大学では水野勝義教授と早坂誠次講師に主に師事され生化学を中心とした研究手法を駆使した研究を進められた印象を私は持っていました。彼と私には1986年に中澤、玉井、清澤での共著論文が有ります。グレーフェ誌の1986;224(3):247-50。エーラス・ダンロス症候群における外傷後強膜ブドウ腫に対する保存強膜の同種移植というものでした。 DOI: 10.1007/BF02143064その抄録では:エーラス・ダンロス症候群VI型の38歳女性の外傷後強膜ブドウ腫に対して、保存強膜の同種移植が成功裏に実施された。移植組織はグリセロール脱水により保存した。術後 1 年間、移植片不全や強膜ブドウ腫の再発の兆候は見つかっていない。我々の知る限り、これはエーラス・ダンロス症候群患者のこの眼合併症を治療するために保存強膜同種移植片を使用した最初の報告である。:とされていました。

 優秀な後輩医師の逝去を惜しむものです。

 

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