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[No.3708] 革命記念日(7月14日)に寄せて ― フランスがもっと好きになる日

革命記念日に寄せて ― フランスがもっと好きになる日

7月14日はフランスの革命記念日(Fête nationale française)、通称「カトーズ・ジュイエ(14 juillet)」。1789年のこの日、パリ市民がバスティーユ牢獄を襲撃し、絶対王政に揺さぶりをかけたフランス革命の幕が切って落とされました。フランスにとって、自由・平等・友愛という共和国の理念の原点ともいえる象徴的な日です。

この記念日には、パリのシャンゼリゼ通りで華やかな軍事パレードが催されます。共和国の誇りと国防の姿勢を示すこの行事では、外人部隊の工兵隊がひときわ注目を集めます。革の前掛けに斧を携えて行進する彼らの姿は、厳粛でありながらもどこかロマンチックで、テレビ中継を通じて多くの国民がその姿を見守ります。

空を見上げれば、青・白・赤の三色の煙を引きながら戦闘機が編隊飛行し、共和国の理念を空に描きます。テレビの前では家族がパンやチーズを片手にワインを楽しみながら、「やっぱり共和国っていいよね」と微笑み合う——そんなひとときもまた、フランスらしい情景です。

この時期のフランスを語るうえで欠かせないのが「バカンス」です。フランス人の夏のバカンスは7月中旬から8月いっぱいまで。5週間以上の休暇をとる人も多く、都市部の多くの飲食店やブーランジュリーは長期休業に入ります。人気の星マーク付きレストランも「バカンスにつき休業中」の張り紙が並び、大ホテルのレストランだけが営業を続けているのが夏のパリの風物詩です。

それでも、夏のパリの魅力は色あせません。セーヌ川のほとりで読書にふける人々、モンマルトルの丘の上から街を見渡す恋人たち、夜のセーヌを走るクルーズ船から眺めるエッフェル塔の煌めき……。少し不便でも、それが旅の記憶に味わいを添えてくれるのです。

フランス人にとってバカンスは、単なる長期休暇ではありません。「生きるために休む」という哲学の実践です。5月頃になると、「今年はどこへ行こうか?」という会話がランチタイムに飛び交います。「東欧へ自家用車で旅するつもりだよ」「海外領土のグアドループかマルチニーク(カリブ海、西インド諸島)に行ってみたいな」など、楽しみにしている様子が伝わってきます。

私たち日本人も、こうした「仕事と休暇の調和」の精神に学ぶところがあるのではないでしょうか。効率や成果にばかり目を向けず、「どう休むか」もまた人生の豊かさを測る尺度になる。そんな考え方が、働き方や生き方を見直すヒントになるかもしれません。

私自身、1987年にフランス原子力委員会(CEA)の生物学部門に留学した経験があり、今年はその縁で、広尾のフランス大使館で行われた留学経験者(アンシャンブルシエ)のパーティーに招かれました。美しい建物、洗練された料理、そして何より「フランスに育ててもらったようだ」と感じさせる温かい言葉の数々に、静かな誇りと感謝を覚えました。この会も、革命記念日を意識して開催されたものでした。

フランスには、美術、音楽、建築、文学、哲学——知的好奇心を刺激するあらゆる魅力が詰まっています。クロックムッシュとエスプレッソの香る朝、マルシェで交わされる気さくな会話、「ボンジュール」と微笑みかける見知らぬ人々。そうした日常の断片にこそ、フランスの美しさがあります。

7月14日、革命記念日。この機会に、あなたも少しだけフランスに想いを寄せてみませんか?フランス映画を観るのもいい、本を読むのもいい、旅の計画を立てるのも素敵です。フランスの魅力は、きっといつでもあなたのすぐそばにあるのです。

注:

今年のパレード概要(パリ)

  • 実施場所:前年のオリンピック開催による変更を終え、再びシャンゼリゼ通りで開催されますcervens.net+2secretsofparis.com+2en.wikipedia.org+2

  • 日時:7月14日10:00〜12:00にかけて、エトワール凱旋門(シャルル・ド・ゴール広場)からコンコルド広場まで行進

  • 開始式:凱旋門前で国家元首(大統領)と軍最高司令官による点検・閲兵式が行われますen.wikipedia.org

  • 構成

    • 地上部隊(歩兵・騎兵・装甲車両など)、

    • 約200頭の騎馬および155台の軍用車両、80台のバイクを含む約250台の車輌、

    • 航空部隊(約63機の飛行機・ヘリ、パトルイユ・ド・フランスの9機編隊によるアクロバット飛行)

  • 参加規模:地上部隊は6,000人以上が行進し、約240頭の馬と大規模編隊が参加

  • 外国部隊の参加:招待された外国軍部隊の参加も含まれるケースがあり、2025年はインドネシアがゲスト国に指定されており、インドネシア大統領プラボウォ・スビアント氏の出席およびインドネシア軍の参加が予定されています

  • 注記;今年のパレードでもジャンダルメリー(憲兵隊)の楽団の前で行進の末尾が革の前掛けに斧を持った外人部隊でした。其処に意味があるのかどうかはわかりませんがこの工兵隊が貴賓席前に到達したらマクロン大統領他全ての来賓はそれまでの椅子から起立して外人部隊の工兵隊を迎えました。その行為にはどのような意味が有ったのか教えてください。

    2025年のバスティーユ・デイ(フランス革命記念日)の軍事パレードにおいて、行進の末尾でフランス外人部隊工兵隊(le génie de la Légion étrangère)および国家憲兵隊の音楽隊(musique de la Gendarmerie nationale)がマクロン大統領ら貴賓の前に差し掛かったとき、全員が立ち上がって迎えた行為には、以下のような深い敬意と象徴的意味があります。


    1. 外人部隊に対する特別な敬意

    • フランス外人部隊は、フランス国籍を持たない兵士たちが身命を賭して共和国に仕えるという、特異な存在です。

    • その歴史は1831年に遡り、フランスのために数多くの戦場で戦ってきました。

    • 特に工兵隊(le génie)は、伝統的に行進の最後尾を担い、重い斧(pionnier)を持ち髭をたくわえた制服姿で登場するため、象徴性が強い。

    • この「最後にして最も名誉ある」ポジションに対して、立ち上がることで国家と市民社会の最大級の敬意を表したと解釈できます。


    2. 音楽隊(楽団)に対する文化的敬意

    • パレードの最後に演奏する憲兵音楽隊は、軍事と文化を結ぶ存在です。

    • 彼らの演奏は「パレードの余韻を締めくくる」役割を担っており、軍事行進を文化行事へと昇華させる象徴的存在です。

    • 全員が立ち上がることは、軍楽隊の芸術性や儀礼の重みを強調する行動ともいえます。


    3. 大統領以下全員が立つ意味

    • 共和国大統領を含む全員が同時に立ち上がるというのは、個人的敬意ではなく国家としての公式な敬礼を意味します。

    • 外人部隊の工兵隊は「フランス軍の魂」と称されることもあり、彼らが登場するときに起立することは、「共和国が彼らの献身に答える」姿勢の表れです。


    結論

    したがって、2025年のバスチーユ・デイにおいて、パレードの最後に外人部隊工兵隊と憲兵音楽隊が登場した際にマクロン大統領以下が起立して迎えた行為は、

    「共和国が最も献身的な者たちに最大限の敬意をもって答える」

    という、フランス的な価値観(犠牲・名誉・統合)を体現する儀礼的かつ象徴的な行為でした。

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