「イレギュラー作業はいったん止めて!」──自由が丘再開発現場の安全スローガンに学ぶ医療の姿勢
通勤で自由が丘の街を歩いていたある日、再開発工事現場の仮囲いに目を引く横断幕が掲げられていました。それが、「イレギュラー作業はいったん止めて!Stop&Checkミーティングを実施!!」という鹿島建設のスローガンです。私は眼科医として、この言葉に意味を感じ、思わずその場で写真を撮影したのですが、どうにも気になり、今朝、背伸びをしてもう一度きれいに撮り直してしまいました。
■ スローガンの背景と本質
このスローガンは、鹿島建設が全社的に掲げる「STOP&CHECK」活動の一環です。建設現場において「イレギュラー作業」、すなわち予定と異なる対応や突発的な変更が必要となった場合、ただちに作業を止め、チームで短い打ち合わせ(ミーティング)を行ってから再開するというルールです。
この背景には、建設現場における想定外こそが重大災害の温床になるという厳しい教訓があります。鹿島建設の安全管理広報では、同社の「STOP&CHECK」活動の具体例として、以下のような場面が挙げられています。
- 作業内容が変更になった
- 他の業者と交錯する作業になった
- 道具や足場の配置が異なった
このような時に、そのまま作業を続けてしまうと、安全確認が不十分となり、法令違反や重大事故につながる恐れがあるのです。現場の横断幕にも、「そのままやったら法違反!!」と赤字で強調されており、緊張感が伝わってきます。
(参考:鹿島建設公式HP「STOP&CHECK活動」
https://www.kajima.co.jp/news/digest/sep_2020/site/index-j.html)
建設現場における安全衛生管理 | サステナビリティ | 鹿島建設株式会社
■ 医療現場への応用:止まる勇気と話す習慣
この「いったん止めてミーティング」の姿勢は、私たち眼科医をはじめとする医療現場にとっても、大いに学ぶべき考え方です。医療の現場でも、以下のような「イレギュラー」は日常茶飯事です。
- 想定外の症状が見つかった
- 患者の急変
- 器械のトラブルや薬剤の変更
- 担当スタッフの変更による申し送りの乱れ
これらに対して、「慣れているから」「時間がないから」と対応してしまうと、誤診や事故のリスクが高まります。そこで必要になるのが、一度手を止め、チームで確認する時間をとるという習慣です。
たとえば当院では、検査員が想定外の視野結果を得た場合、すぐには患者に知らせず、医師と一緒に再度データを確認した上で方針を決めるというフローを設けています。これはまさに「Stop&Checkミーティング」に該当します。
■ チーム医療の安全文化として
工事現場と同様に、医療現場も多職種が関わるチーム作業の場です。「止めて、話す」という行為は、個人の判断をチームに開くことで、責任の共有とリスクの分散を可能にします。
特に、白内障手術やレーザー治療、外来での緊急眼科処置においては、準備と段取りに小さな変更があるだけでも結果が大きく左右されるため、どんなに軽微な「イレギュラー」でもミーティングを行うことが医療安全の基本です。
■ 自由が丘の再開発とともに
このスローガンが掲出されていた現場は、自由が丘駅前の再開発地区。街の新しいランドマークとなる建物が生まれる最中で、鹿島建設がその安全と品質を守りながら工事を進めています。その姿勢には、私たち地域医療に従事する者としても共鳴するものがあり、「安全とは段取りを再確認することで守られるもの」という共通原則を再認識させられました。
【まとめ】
「イレギュラー作業はいったん止めてミーティング」というスローガンは、鹿島建設が実践する安全文化の象徴であり、医療現場にとっても有益な教訓です。きっと間違いのない優れた建築物が完成することでしょう。想定外の状況こそ、焦らず止まって、話し合い、再確認する勇気と習慣を持つこと──それが患者さんの安全と信頼、そして医療従事者の誇りにつながっていくのだと感じます。
※写真は2025年7月31日、自由が丘の鹿島建設施工現場にて筆者撮影から切り抜き。
※参考資料:鹿島建設 STOP&CHECK活動について
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