清澤のコメント:知床観光船沈没事件で考える、“ベテランをリストラする”弊害とは(https://bunshun.jp/articles/-/53973 山本 一郎 )という記事が出ています。私も神の御許に召された方々の魂に限りない平安があらんことを心よりお祈りいたします。それにしてもこのケースは記事の著者が言う通り、「リストラで固定費を削って採算を合わそう」という方便をとれば、いつか事故は起きるという話と思われます。
ーーー記事要点採録ーーー
ベテラン社員の解雇を中心とした固定費削減で収益を確保
ここでも行き過ぎた経営の合理化が安全管理を怠り、結果として偶発的なヒヤリハットがそのまま最悪の事態になってしまうケースのように見えます。ー中略ー
以前にも座礁事故を起こして処分と再発防止の計画書を出していたとか、予兆となる事案から対策が打たれずそのままになっていたのだとすれば、観光船運営会社の責任が追及されるのも当然のことと言えます。
また、この観光船運営会社はもともと赤字で、著名な経営コンサルタント会社が関与することで経営が立て直されたと豪語し、自画自賛するような記事が経済系ニュースサイトに掲載されていたことも明らかになっています。経営改善の過程でどのような助言が行われたのかは定かではありませんが、そこでの記述を見る限りでは、経営再建のためにベテラン社員の解雇を中心とした固定費削減で収益を確保するタイプのリストラが行われていたことは間違いなさそうです。
実のところ、不振会社を買収して経営者を入れ替え、収益化させて第三者に売却するという、俗にいう「ターンアラウンド(企業再建)案件」というものは以前からずっとあります。企業・法人においても、経営不振に陥っているけど売り上げはしっかりある老舗というものはたくさんあり、それらは往々にして前経営陣が人情や業務上の問題で古株の社員を解雇できなくて人件費の重みゆえに不採算だという事例が多くあります。
事故を起こすのは時間の問題だったのでしょう
企業再建においては、その企業の価値を実現するために必要な人員を割り出し、その売り上げが大きく減らないレベルで人員整理をするのはある種の必勝法であって、これらを企業再建案件の黄金律としてコンサルする会社はいくつも見つかります。不振会社が営業低迷で生んでしまった余剰人員を切れなくて採算が大きく悪化するのは本当に事例として多いんですよね。そのぐらい、企業再建の現場において投資でも経営参画でも首切りを得意とするところは仕事がいっぱいあるわけですよ。
とりわけ、今回問題となった知床の観光船などは特にそうですが、コロナ禍が突然やってきて外国人観光者によるインバウンド需要が突然抜け落ちて、その観光収入に依存してきた地方経済を直撃してしまいました。インバウンドありきで過剰投資を続けてきた地方のホテルや観光地は、投資負担と収益減少のダブルパンチでリストラをしなければならない状況が出ただけでなく、高級食材を中心に1次産品も流通価格の大幅な下落で身動きが取れなくなりました。
同様に、地方の人口減少が慢性疾患や高齢者を対象とする病院の経営を圧迫し、地方に根差してきた医療法人などでもたくさんの「売り物件」が出るようになりました。しかし、これらの地域の観光も1次産業も医療も、需要がゼロになったわけではないので、上手く合理化すれば利益が出せる可能性があります。
だからこそ、これらの企業再建・再生案件で地方企業や組織・法人を手がける人たちが増え、また、それに対して適法な人員整理を請け負う企業やアドバイスを行うコンサル会社などが跋扈するのもまた自然なことと言えます。
他方、観光船もそうですが、その企業が売り上げを上げるには専門知識のある人員が必要だったり、売り上げを得るための設備が必要だったりすることもまた多くあります。ー(中略)ー おそらくは、ベテランの船長・甲板員がしっかり現場に残っていて、然るべく整備された船舶で航行する分には問題なかったのかもしれません。ですが、ここで企業が収益のためにベテランを解雇して新人で運行し、また、船舶の整備も満足にされていなかったのだとするならば、事故を起こすのは時間の問題だったのでしょう。
ブラックにならなければ経営が成り立たない
かといって、企業としても、利益を生み出すことができなければ潰れてしまいます。人件費負担が重くて赤字が続いているのであれば、誰かを解雇したり、船の修繕代金のような設備投資や修繕費用をケチらざるを得ないというのもまた経営判断としては出さざるを得ない面もあるかもしれません。
人の命を預かる輸送・運送業が、コスト削減の結果大変な事故を起こす結論に達するのもまた衰退する地方経済あるあるになってしまい、また、本当の意味でのブラック企業とはこういうことだとも言えます。ブラックにならなければ経営が成り立たないという言い訳が通るはずもありませんが、事故が起きない限り是正できない面もあるのだとすれば、これほど救いのないこともありません。ーーー
ホリエモンも、怪しいコンサルのことを話していました。グレーゾーンはだめですと言ってます。
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