垂直方向に眼位ずれがあり、ヘスチャートなどで検討しても特定の麻痺筋が検出されない場合に天秤斜視、斜変位(Skew deviationまたは天秤斜視)との診断がなされます。
スキュー偏位とは、通常5プリズムダイオプター未満の垂直方向の両眼の視軸の上下方向の不整合で、垂直複視があり、眼球運動神経や眼外筋の問題によるものではありません。急性前庭症候群(AVS)の患者において、重力受容経路の機能不全により、垂直方向の眼球の不整合による垂直複視が生じます。
スキュー偏位は、脳幹または小脳領域への損傷によって引き起こされることがあります。内耳は、直線運動と傾斜運動を検出する耳石を含む耳石器と耳嚢(卵形嚢・球形嚢・三半規管)から構成され、この情報を中脳のカハール間質核に伝達します。したがって、この入力を切断する任意の病変はスキュー偏位を引き起こす可能性があります。
高齢者では、スキュー偏位は主に脳卒中によって引き起こされますが、脳幹脱髄性病変、炎症、外傷、腫瘍、膿瘍、手術などによる病変もスキュー偏位を引き起こすことがあります。スキュー偏位のその他の稀な原因としては、アーノルド・キアリ奇形やクロイツフェルト・ヤコブ病があります。
高齢者では、脳卒中の一般的な血管障害原因がスキュー偏位の主な危険因子です。これらには高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、動脈硬化が含まれます。若年者では多発性硬化症やNMOSDからの脱髄性病変および外傷が危険因子です。
ーーーーーー
コメント