神経眼科

[No.1975] アルツハイマー病新薬「レカネマブ」承認へ

清澤のコメント:認知症の主要なものの一つにアルツハイマー病がある。この疾患では脳の神経細胞中にアミロイドβが蓄積するので、それを取り除く薬剤の開発が行われた。今回承認されたレカネマブがその薬剤である。それを紹介した記事を抄出採録する。

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アルツハイマー病新薬「レカネマブ」承認へ 原因物質を除去、国内初

藤谷和広 後藤一也

 日本の製薬大手エーザイと米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の新しい治療薬「レカネマブ(商品名レケンビ)」について、厚生労働省の専門家部会が21日、国内での製造販売承認を了承した。正式に承認されれば、認知症の原因物質を除去する初めての治療薬となる。 アルツハイマー病は脳の神経細胞が壊れ、認知機能が徐々に低下する病気。脳内に「アミロイドβ(Aβ)」という異常なたんぱく質がたまることが原因と考えられている。既存の認知症薬は神経の働きを活発にして症状の緩和を図るが、レカネマブは病気の原因となるAβを除去し、進行を抑えることを狙う。 対象は、軽度認知症と、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の人。壊れた神経細胞の再生は難しいため、症状が進んだ人は対象となっていない。投与前に脳内にAβがたまっていることを検査で確認。2週間に1回、静脈内に点滴で投与する。

 約1800人が参加した国際的な臨床試験(治験)では、18カ月の投与で、偽薬と比べて記憶力や判断力などの程度を評価するスコアの悪化が27%抑えられた。一方で、薬を使った人の12・6%に脳内の浮腫、17・3%に微小出血が報告されるなど副作用も確認された。米国では、レカネマブを使う前に、検査で副作用が出やすいとされる遺伝子型かどうかを調べることが推奨された。

 この日の部会では、脳内のAβの蓄積を調べる「アミロイドPET検査」の診断薬を、アルツハイマー病が疑われる軽度認知障害の人にも使えるよう対象を拡大することも報告された。これまではアルツハイマー病患者が対象だった。

 国内の認知症の人は約600万人、約7割がアルツハイマー病とされる。レカネマブと同じタイプの薬の潜在的な対象者は、多く見積もると数十万人とされる。早ければ年内にも実用化される見込みで、新たなタイプの薬への期待は高い。(藤谷和広、後藤一也)

アルツハイマー病 (神経眼科 臨床のために 第4版 江本、清澤、藤野 著) 抜粋

Alzheimer disease(AD), senile dementia of Alzheimer’s Type(SDAT)
● 潜在的,緩徐進行性の1)記憶障害,2)認知障害(失語,失行,失認など)を呈し,
日常生活に支障をきたす疾患で,他の認知症・精神疾患が否定されたもの。
認知症の約50% はアルツハイマー型。残り25%:脳血管性,15%:レビー小体型認知
症。
● 病因は不明な点が多いが,アミロイドβ ペプチドが脳に蓄積すること,神経原線維変化
を起こすこと,アセチルコリン作動性ニューロンが変性することなどがわかっており,
全般的な脳皮質の萎縮を起こす。
● 本疾患に移行するまでに,軽度認知障害mild cognitive impairment(MCI)という予備
段階がある。
● MRI では海馬の萎縮,側脳室下角の拡大などを認める。SPECT で側頭葉・頭頂葉,帯
状回後部の血流低下を認める。
危険因子:高齢,家族歴,高血圧,糖尿病,喫煙,高脂血症,魚の摂取不足,運動不
足。
● 神経眼科的な症状として幻視,視覚失認visual agnosia を呈する。組織神経眼科学的には網膜神
経節細胞の変性などを認める。
● 平均約10 年(3~20 年)で,肺炎などで亡くなる。

その昔の記事ですが私の原著です:

顕著な視覚症状を伴うアルツハイマー病: 臨床的および代謝的評価:昔の自著論文です

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