清澤のコメント;嘗て1980年代に東北大学眼科では早坂征次先生が中心になってジャイレートアトロトロフィーの研究が行われていました。その当時教室に在籍したものとしては、懐かしさを感ずる病名です。 今回慈恵医大からOAT遺伝子の複合ヘテロ接合性変位による症例が今月の日眼会誌に報告されました。この論文には、脳回状脈絡網膜萎縮症(GACR)に関する情報が含まれていて、まれな常染色体劣性遺伝の先天性代謝異常症で、ビタミンB6(VitB6)依存性オルニチンアミノ基転移酵素活性の低下による高オルニチン血症を特徴とし、進行性の脈絡網膜変性を来す疾患だとされています。そしてOAT遺伝子の複合ヘテロ接合性変異による脳回状脈絡網膜萎縮症の男児例が報告されています。この症例では、低蛋白質食治療とVitB6投与の併用によって血中オルニチン値の低下が維持されたが、網脈絡膜萎縮は進行性に拡大したことが報告されました。
―――抄録の一部抄出―――
Ornithine aminotransferase(OAT)遺伝子の複合ヘテロ接合性変異による脳回状脈絡網膜萎縮症の男児例
中野 裕太ほか:
目的:脳回状脈絡網膜萎縮症(GACR)は,まれな常染色体劣性遺伝の先天性代謝異常症で,ビタミンB6(VitB6)依存性オルニチンアミノ基転移酵素活性の低下による高オルニチン血症を特徴とし,進行性の脈絡網膜変性を来す.
症例:3歳,男児.外斜視の精査を目的に受診.以前より夜盲を呈していたが,明らかな眼底異常はなく経過観察.6歳時の眼底検査で両眼の耳側網膜周辺部に特徴的な脳回状の網脈絡膜萎縮がみられた.全視野刺激網膜電図の杆体系・錐体系反応はいずれも消失.高オルニチン血症を認め,GACRが疑われたため,VitB6投与を開始.低蛋白質食治療を併用したところ血中オルニチン値は低下.最終的に必須アミノ酸を補った蛋白質制限とVitB6投与によって血中オルニチン値の低下が維持された.全エクソーム解析を行い,ornithine aminotransferase(OAT)遺伝子に複合ヘテロ接合性変異(p.Arg271Lysとp.Arg426Ter)を検出.8歳時の眼底検査で網脈絡膜萎縮は明らかに拡大.
結 論:低蛋白質食治療とVitB6投与の併用によって血中オルニチン値の低下が維持されたが,網脈絡膜萎縮は進行性に拡大した.本症例も含め,過去の日本人GACR症例(13例)のOAT遺伝子変異をまとめた結果,p.Arg426Terが高頻度変異(27%,7/26アレル)であることが見出された.(日眼会誌127:1069-1080,2023)
キーワード
脳回状脈絡網膜萎縮症(GACR), ornithine aminotransferase(OAT)遺伝子, 全エクソーム解析, ビタミンB6, 低蛋白質食
私も関連した過去の関連論文:Takahashi O, Hayasaka S, Kiyosawa M, Mizuno K, Saito T, Tada K, Igarashi Y. Gyrate atrophy of choroid and retina complicated by vitreous hemorrhage. Jpn J Ophthalmol. 1985;29(2):170-6. PMID: 4046225. (硝子体出血を合併した脳回転状脈絡網膜萎縮症)
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