小児の眼科疾患

[No.2600] 幼児の虐待による頭部外傷に関連する牽引力による網膜出血と損傷:論文紹介

国立小児医療研究センター眼科部長を長年務められた東先生が「幼児の虐待による頭部外傷に関連する牽引力による網膜出血と損傷」という報告をScientific reportという有力な医学雑誌に発表されました。その結論としての、「広範囲の眼底写真は、網膜出血およびその他の網膜損傷の原因を記録および評価するのに役立ちます。」という部分には全く同意いたします。しかし、その出血が眼底所見だけによって「幼児の虐待による頭部外傷に関連する」ものである事をを裁判における証拠として提出し、裁判官に有罪の判決を下させる際の、もっとも決定的な材料として主張できるほどに確実なものであるかどうかという点に関しては、やや疑問が残ると言わざるを得ません。確かに乳児虐待による重症の脳損傷例で強い後遺症を残したり、死亡したという例があります。それを防止しようとする意図は十分に了解します。しかし読者の皆様には、最近の国内の判例が「眼底出血所見だけを決定的な証拠としての有罪判決」を否定する方向に連続して傾いていることにもご留意いただきたいと思います。それを述べたのが日本医事新報への私の投稿です。(末尾参照)

   ーーー東先生のScientific reportへの投稿記事の要旨(翻訳)ーーーーー

広範囲の眼底写真によって評価された、幼児の虐待による頭部外傷に関連する牽引力による網膜出血と損傷
Azuma Noriyukiほか

私たちは、虐待による頭部外傷 (AHT abusive head trauma) による目の網膜出血 (RH) およびその他の損傷の分布と種類を評価しました。 この AHT と非 AHT 症状の一連の遡及的連続症例には、AHT の子供 54 人、頭部打撲の子供 43 人、鈍眼外傷の子供 49 人が含まれており、非 AHT のそれぞれは信頼できる目撃者の証言によって裏付けられています。 RHs およびその他の損傷は、検眼鏡検査と広視野眼底写真を使用して評価します。 AHT グループではさまざまな RH タイプとその他の損傷が確認されましたが、非 AHT グループでは確認されませんでした。 AHT の RH は、目の 77% で後極から末梢まで、86% で静脈上またはその近く、85% で動脈に伸びており、そのほとんどが末梢にありました。 網膜剥離、白点病変、網膜ひだなどが遠端まで認められました。 静脈および動脈上またはその近くの RH、網膜剥離、および網膜ひだは、網膜表面全体に付着している硝子体の牽引力の外傷メカニズムを示唆しています。 RH の分布と動脈および静脈の起源を特定することは、外傷との関連性を判断する上で重要な要素です。 したがって、広範囲の眼底写真は、RH およびその他の網膜損傷の原因を記録および評価するのに役立ちます。

乳児の眼底出血、所見から虐待の判断は可能?:日本医事新報自著記事から

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