小児の眼科疾患

[No.194] 弱視は8歳までに発見して治療しないと回復のチャンスを逃す:日刊ゲンダイ自著記事紹介

みんなの眼科教室 教えて清澤先生

弱視は8歳までに発見して治療しないと回復のチャンスを逃す

写真はイメージ

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【Q】6歳の子供が「弱視」と診断されました。弱視とはどんな状態を言うのでしょう? 今後どのようなことに注意すればいいでしょうか。

【A】ご心配ですね。お察しします。100歳まで生きることが珍しくない長寿社会になり、弱視を含めた視覚障害者の増加が予想されます。現在、日本では視覚障害者は約30万人とされています。2017年、英国の医学誌「ランセット・グローバル・ヘルス」では、目が見えない人の数は40年以内に世界中で現在の3600万人の3倍に増えるかもしれないという研究結果を発表しています。

そもそも「視覚障害」とは、視野や視力、色覚などに障害があり、日常生活を送るうえで困難さを感じている状態を指します。簡単に言うと、眼鏡をかけても一定以上の視力が出ない弱視だったり視野が狭かったりして、人や物にぶつかる状態です。これが「社会的弱視(低視力者)」です。 身体障害者福祉法に規定されている視覚障害は、視機能のうちの矯正視力と視野の程度により、1~6級に区分されています。世界的には、低視力の第一の原因は白内障ですが、日本では手術さえ受けられれば視力の回復が得られる可能性が高いので、身体障害には含めません。

 先ほど弱視について眼鏡やコンタクトレンズなどを使っても良い視力が出ない状態を指すと説明しましたが、弱視にはまったく異なった2つの定義があります。

 そのひとつは社会的・教育的なもので、眼科診療で用いている弱視(アンブリオピア)との混乱を避けるため、最近は「ロービジョン(低視覚)」というようになってきています。具体的には、「両眼の矯正視力が0.3未満のもの、または視力以外の視機能障害があり、学習や日常生活上に制約があるが、主として視覚における様々な行動ができる者」とされています。ですから「裸眼視力は0.1だけど、コンタクトレンズを入れると1.0になる」という場合は、弱視(ロービジョン)とはいいません。その低視力回復の可能性は原因となる病気によります。

 もうひとつの定義に該当する弱視(アンブリオピア)が、小児における視力障害の最も一般的な原因です。質問者のお子さんの弱視は、おそらくこの分類に含まれる弱視でしょう。眼から送られてくる像を脳が無視するために起こる視力の低下です。8歳になる前に診断かつ治療されないと、視力障害が回復不能なものとなる場合があります。

 弱視の原因には、焦点を合わせられない(屈折異常弱視)、左右の眼の向きのずれ(斜視弱視)、白内障またはその他の眼の異常(視覚遮断弱視)の3種類があります。 診断は視力検査で下さされます。早期に発見され、治療された場合は、弱視を矯正することが可能です。この弱視は小児の約2~3%に発生し、通常は2歳以前に表れます。

 子供は生まれたときには、視覚路がまだ十分に発達していません。視覚系と脳が正常に発達するためには、同じ方向を向いた左右の眼から、明瞭に焦点が合った重なりあう像の情報を受け取る必要があります。視覚系と脳の発達は主に生後3年間に起こり、およそ8歳頃まで続きます。この発達期間中に、片方の眼から適切な視覚刺激を脳が受けなかった場合、脳はその眼からの像を無視するようになり、その結果、視力障害が生じるのです。

 抑制期間が長いと、視力障害は固定されるケースがあります。このようにして視力障害が恒久化したものを弱視(アンブリオピア)と呼びます。 眼は、左右の眼から1つずつ2つの像を生成し、通常はこれらの像が脳内でひとつの像に融合され、さらに統合されて3次元の像と高度な奥行き感覚が生み出されます。像を融合させる能力は小児期の早い段階で発達します。たとえ眼の構造が正常であっても、脳は抑制のかかった眼からの像を認識しなくなります。 視覚発達過程での異常を発見するために、すべての小児に対し3歳頃に視力スクリーニングが行われます。そしてこれは就学時健診へと引き継がれます。スクリーニングで問題が見つかった場合には、直ちに眼科医を受診しましょう。

 弱視または弱視の危険因子の発見が早いほど、弱視を予防または矯正できる可能性が高くなります。視覚が成熟するとされる8歳頃までに、弱視が診断され治療されないと、不可逆的なものとなることがあります。5歳までに診断を受け治療された小児のほとんどは、ある程度の視力を回復しています。早めに治療することで、視力が完全に回復する確率も高まります。より年長の小児の場合でも、特定の条件下では治療により視力が回復することがあります。

 弱視の治療には、①眼鏡やコンタクトレンズ、②アイパッチや点眼薬、③斜視があればその治療、④若年者に先天性白内障があれば白内障手術があります。

 通常の弱視の治療では、患側の眼からの像も脳で強制的に処理させるようにします。それには、眼鏡またはコンタクトレンズで屈折異常を矯正するだけで済むこともあれば、視力が良い方の眼をアイパッチ(眼帯)で覆ったり、視野をかすませる点眼薬を良い方の眼にさしたりして、見えにくい方の眼を強制的に使うようにさせる場合もあります。視力が良い方の眼にアイパッチや点眼薬を使用することで、見えにくい方の眼が強くなるのです。

 斜視が弱視の原因である場合には、左右の眼の視力を同じにした後、手術によって目の向きを矯正しなければなりません。また、白内障やその他の眼の混濁にも手術が必要になるケースがあります。

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