睡眠中に目が閉じ切らない状態は、閉瞼不全と呼ばれ、まぶたを完全に閉じられなくなる状態を指します。強い閉瞼障害では目に充血を示すことから兎眼とも呼ばれます。⇒昨日のネットには芸能人がそれを診断されたという記事が出ていました。私の考えるこの疾患の概要、診断、治療を述べてみます。
1. 病気の概要:
o 閉瞼不全は、さまざまな原因によってまぶたを完全に閉じることができなくなり、眼球の角膜が露出したままになる状態です。
o 特に原因もなく、目を閉じたときにわずかに上下の瞼が隙間を持ち、閉瞼時の眼球上転(ベル現象)が弱い人で角膜の損傷が見られることもあります。(図)
o 重度の場合、角膜が障害されて視力障害や失明につながる可能性もあります。
2. 症状:
o 初期段階では、目がごろごろする、痛みがある、いつも涙が流れるなどの症状を訴えます。
o 強めの閉瞼不全を放置すると、乾燥により角膜表面特に下3分の一あたりが損傷して角膜びらんを生じ、やがて角膜潰瘍を生じることがあります。
o そこに感染を起こすと重症化し、角膜が白濁して、眼鏡を使っても視力が出なくなることもあります。
3. 原因:
o 最も多い原因は、先天性で軽度の物でしょう。
o 疾患としてはウィルス感染によるベル麻痺による顔面神経麻痺です。
o 外傷(閉瞼を妨げる眼瞼皮膚の瘢痕など)、腫瘍(聴神経腫瘍など)、代謝異常、医原性(過度の眼瞼下垂手術)なども原因となります。
4. 検査と診断:
o 眼科医による診察が必要です。細隙灯顕微鏡を用いて角膜をフルオレセイン試薬で染色して眼球表面を詳しく検査します。
o 脳梗塞や脳腫瘍に起因していないかも検査します。
5. 治療:
o まず保存的にはヒアレイン、ジクアス、レバミピドなどの点眼液で涙を補い角膜保護を図ります。
o 次に考えられるのが流点プラグを上下の涙小点に挿入して眼表面から鼻腔への本人の涙の流出を減らす方法を試すことができます。
o 最終的には、手術的治療も考慮されます。閉瞼不全が一時的であると予想されれば、上下の瞼を一時的に縫い合わせるtarsoraphyを考えることもあります。このほか永続的であれば、上眼瞼に金属の板を埋めて重力で上眼瞼を軽度下垂させる治療や、下眼瞼の筋膜や軟骨移植による機能再建も考えられます。しかしこれらは、一般的ではありませんから眼形成の専門医でなければ行いません。閉瞼不全の治療は技術的に高度な手術であり、患者さんの状態に応じた選択肢からの選択が必要です。
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