白内障

[No.3279] 白内障手術後の眼鏡または仮眼鏡処方の際に考慮すべき注意点

日本での標準的な白内障手術後の眼鏡または仮眼鏡処方の際に考慮すべき注意点を以下に挙げてみます。

1. 眼鏡処方のタイミング

  • 正式な眼鏡処方は術後1か月以降が推奨
    • 水晶体嚢の収縮や屈折値の変動が安定するまで約1か月を要するため、適切な処方にはこの期間の経過を待つ必要がある。
  • 術後早期(1週間程度)に仮眼鏡を作成することもある
    • 術後の生活のために近視・遠視の矯正が必要な場合は、簡易的な仮眼鏡(既成老眼鏡など)を推奨する。

2. 眼内レンズ(IOL)の種類に応じた処方

  • 単焦点眼内レンズの場合

    • 遠方にピントを合わせた場合:近用眼鏡(老眼鏡)が必要
    • 近方にピントを合わせた場合:遠用眼鏡(運転用など)が必要
    • 屈折の左右差が大きい場合(術後に不同視が生じる場合)は、遠近両用眼鏡を検討。
  • 多焦点眼内レンズの場合

    • 近方・遠方ともにある程度見えるが、コントラスト感度が低下しやすい。
    • 夜間のハロー・グレアがある場合、夜間運転用の眼鏡を処方することがある。
    • 細かい作業や読書には追加の近用眼鏡が必要になることもある。

3. 片眼手術後の眼鏡処方

  • 片眼のみ手術を行った場合、術前の眼鏡がそのままでは合わなくなることがある。
  • 手術後の眼の屈折度数に合わせて、眼鏡の度数を調整する必要がある。
  • 不同視(アニソメトロピア)が生じると、めまいや眼精疲労の原因になるため、プリズム補正やコンタクトレンズの併用を検討。

4. 乱視補正の考慮

  • 手術後の角膜乱視が残存している場合、**円柱レンズ(乱視矯正眼鏡)**が必要になることがある。
  • 乱視矯正用のトーリック眼内レンズ(乱視矯正IOL)を挿入していても、微調整のために眼鏡を処方することがある。

5. 白内障術後の視機能の変化

  • コントラスト感度の向上:術前よりもまぶしさを感じやすくなることがあるため、偏光レンズやブルーライトカットレンズの検討。
  • 色の見え方の変化:術後、青みが強調されることがあり、術前の色覚との違いに違和感を覚える場合がある。

6. 近用眼鏡(老眼鏡)の選び方

  • 術後の手元作業に適した度数を決める(新聞・読書用、スマホ用、パソコン用など)。
  • 中間距離用の眼鏡を別に作るか、遠近両用や中近両用を検討するかを患者と相談。

7. 特殊なケース

  • 術後の黄斑疾患(加齢黄斑変性など)がある場合
    ルーペや拡大鏡の併用が必要なこともある。
  • 白内障手術後に近視が進行した場合
    → 若年者や糖尿病患者では術後も屈折変化が起こることがあり、定期的な視力評価が必要。

8. 患者への説明と適応

  • 手術後の屈折の変動や眼鏡の必要性について事前に説明
  • 患者のライフスタイルに応じた眼鏡の選択を提案
  • 「どの距離にピントを合わせるか」を十分に話し合う

まとめ 白内障手術後の眼鏡処方は、手術の結果(IOLの種類や屈折度数)、患者の生活スタイル、視機能の変化を考慮しながら、慎重に決定することが重要です。

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