患者さんが緑内障のトリセツという内容の番組を見たと教えてくれました。見せてもらいましたら、尤もな内容でしたからその要旨を採録してみます。
緑内障の基本と早期発見の重要性
緑内障は、日本で 失明原因の第1位 となっている目の病気です。40歳以上では20人に1人、70歳以上では10人に1人 がかかるとされ、日本全国で 490万人 もの患者がいると推定されています。しかし、最も重要なのは 患者の9割が自分の病気に気づいていない ということです。
緑内障の特徴は 自覚症状がほとんどない ことです。白内障は水晶体が濁ることで視力が低下しますが、緑内障では 視野が狭くなっていく という違いがあります。視力は最後まで比較的保たれるため、異常を感じにくいのです。さらに、脳が視野の欠損を補完するため、「盲点が黒く見える」わけではなく、部分的な視野の欠損に気づかないことが多くなります。
緑内障の初期症状と気づきにくさ
緑内障が進行すると、以下のような 不思議な体験 をすることがあります。
- 文章を読み飛ばす
- 楽譜の一部が見えない
- 足を踏み外す
しかし、これらは 両目で見ることで補正される ため、自分では異常を感じにくいのです。そのため、 視野の半分以上が欠損するまで気づかない ことが多いとされています。
緑内障の発症メカニズム
視神経には 100万本以上の神経線維 があり、これが網膜の情報を脳へ伝えています。視神経は目の奥の「篩状板(しじょうばん)」という部分を通りますが、眼圧が高くなるとこの篩状板が変形し、神経線維が圧迫されてダメージを受けます。結果として、視野が少しずつ欠損していくのです。
緑内障は自覚症状が出る前の早期に発見することが重要です。
緑内障のセルフチェック
以下の項目に当てはまる人は、緑内障のリスクが高い可能性があります。
緑内障になり易い人:
✅ 眼圧が高い と指摘されたことがある
✅ 家族に緑内障の患者がいる
✅ 強度の近視または遠視(で70歳以上の女性)
自己チェック項目:
■左右の目で見える範囲や明るさが違う
■視線をパッと動かした瞬間に見えにくい
■パソコン作業時マウスポインターを見失ってしまう
■テーブルの上の小鉢に気づかず残す
■急須から湯飲みにお茶がうまく入らない
■車庫入れが下手になってよくこする
■メガネが合わずいくつも持っている
■ メガネがいつも汚れているような気がする
■人混みで人にぶつかる
■ 階段や乗り物のステップを踏み外す
■ごみ箱など足元にあるものにぶつかってしまう
■文章を読み飛ばしてしまい話がつながらない
このような症状がある場合は、早めに眼科を受診することが勧められます。
緑内障の診断と治療
緑内障の診断には、以下の検査が有効です。
- 眼底検査(視神経の状態を観察)
- OCT(光干渉断層計)(神経線維の厚みを測定)
これらの検査により、初期の段階でも視神経のダメージを発見できます。
治療について
- 緑内障の進行を抑えるためには、 点眼薬の使用が基本 となります。
- 点眼薬は一生続ける必要がある ことが多いですが、病気の進行を遅らせることができます。
- 病状によっては 手術(レーザー治療や外科手術) を行う場合もあります。
緑内障と運転
緑内障の診断を受けた人(西葛西井上眼科運転外来)100人のうち、 73人は注意しながら運転を続け、27人は運転を断念 したというデータがあります。視野が狭くなることで、歩行者や車の見落としが発生しやすくなる ため、安全を最優先にすることが重要です。
緑内障と生活の工夫
緑内障と診断された場合、日常生活での工夫 も大切です。
🔹 本を読むときにしおりを当てる → 目が飛ばし読みしないようにする
🔹 歩行時に首を動かして足元を確認 → 視野の欠損を補う
🔹 人と一緒に歩く → 安全性を高める
まとめ
✅ 緑内障は自覚症状がほとんどない病気で、日本の失明原因第1位。
✅ 40歳以上は定期的な眼科検診が重要。
✅ 早期発見にはOCTや眼底検査が有効。
✅ 点眼治療は一生続けることが基本。
✅ 生活の工夫で視野の欠損による不便を軽減できる。
緑内障は 早期発見と適切な治療で進行を遅らせることができる病気 です。40歳を過ぎたら、定期的な目の検診を受けることが 失明を防ぐための最も効果的な方法 です。
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