緑内障

[No.1935] 緑内障治療アップデート:日本の眼科8月号から採録

緑内障治療アップデートが今月の日本の眼科の特集記事です。

◎ 緑内障治療アップデート:池田華子(京都大学)が緑内障治療アップデートを論じています。〈要旨〉は: 緑内障の治療目標は,患者の視覚と生活の質を維持することであり,治療の中心は眼圧を十分に下げることである。薬物治療では,多くの新たな薬剤が登場したことで,バリエーションが広がった。また,選択的レーザー線維柱帯形成術やマイクロパルス毛様体光凝固のように,位置づけのかわりつつあるレーザー治療もある。手術機器の開発により,眼内法線維柱帯切開術が幅広く実施されるようになっている。緑内障の治療には個々の患者に応じたアプローチが必要であり,薬剤治療や手術治療の選択は患者の症状や病期,眼圧の状態などを考慮して行われる必要がある。:とされています。

清澤のコメント:患者さん方と直接対峙する我々開業医は、現在の眼科世界の趨勢を知り、自分の医院では対応できない部分についてはそれを得意とする医師と連携をとりつつ遅滞なく対応することが必要でしょう。多くの新しい薬剤にもアンテナを広げておくことが重要と思います。

◎ 薬物治療の最新事情は本庄恵(東大)が述べています。要旨は「 緑内障治療は一般的に薬物による眼圧下降治療が第一選択となる。近年,様々な機序による眼圧下降薬が使用可能となり,配合点眼剤も増えていることから,選択肢は多岐にわたる。本稿では主要な点眼薬について概説し,それぞれの特徴や使
いわけについておさらいする。」これでは具体的論点が読み取れない。本文を見ると目標眼圧の設定、薬物療法開始と治療強化の基本と話が進められ、Ⅰ.現在使用可能な薬物についてに繋がる。第一選択薬候補と第2選択薬候補についても落ち着いて自分の知識を整理しておきたい。各作動薬の作用点を理解整理することの重要性はもちろんである。最近は、配合点眼薬の種類も多い。

最後に著者は副作用とアドヒアランスで話をまとめている。これも治療者にとっては必須の知識である。

◎ 選択的レーザー線維柱帯形成術の最新事情は福井県済生会病院眼科の新田耕治先生が述べている。要約では: 選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)の施行件数が年々増加している。正常眼圧緑内障の第一選択治療としての SLT をお勧めしたいが,まだ,日本人における SLT 治療成績に関するエビデンスは少なく,さらなる検討が必要な状況である。安全性の高い緑内障レーザー治療であるが,SLTにより著しい眼圧上昇をきたすことがあり,SLTの照射方法を忠実に守って施行していただきたい。SLT 自体は 20 年以上前に登場した治療方法であるが,再照射・再々照射の効果や低出力SLT を毎年施行する方法など世界中で現在もさまざまな論文が発信されている緑内障レーザー治療法である。

清澤のコメント:若くて機材の有る施設に勤務する眼科医なら行いたくなる治療法であろう。が、まだその評価は確立されたものでもなさそうである。この記事には、施行上の注意も詳しく述べられている。施行されるのであれば、今はまだ慣れた医師による施術が無難そうである。

◎ マイクロパルスレーザー治療(毛様体光凝固術・線維柱帯形成術)は藤代貴志先生(東京大学)が述べている。 [要旨] 本邦において近年,マイクロパルスレーザーを用いた新しい緑内障治療が行われるようになってきている。代表的なものとして,マイクロパルス毛様体光凝固術(MP-CPC:Micro Pulse Cyclophoto coagulation)とマイクロパルス線維柱帯形成術(MLT:Micro Pulse Laser Trabeculoplasty)がある。従来から行われてきた緑内障のレーザー治療と比較しながら,これらのレーザー治療の実際の手順やその成績と課題について解説を行う。従来の治療方法よりも低侵襲であるため,術後の合併症の発症頻度が低く,今後期待のできる治療方法である。;という。

①MP-CPC とは? 2017 年から半導体レーザー装置 CYCLO G6(Micro Pulse P3 Glaucoma Devise,IRIDEXⒸ,CA,USA)を用いたマイクロパルス経強膜的毛様体光凝固(MP-CPC:Micro Pulse Cyclophoto coagulation)による治療が行われるようになった。新しいマイクロパルスの技術は,図の右側で示すようにレーザー発振の ON と OFF を極短時間に制御して,マイクロパルス秒でのレーザー発振を行うものであり,0.5 ms の照射と,その後,1.1 ms の照射休止時間をごく短時間で交互に行いながらレーザー発振を行う:とのこと。(清澤注:血管新生緑内障のような難治性の緑内障が適応の様である)

② マイクロパルス線維柱帯形成術(MLT:Micro Pulse Laser Trabeculoplasty)
MLT とは?従来から行われていた,ALT(Argon Laser Trabeculoplasty)や SLT(Selective Laser Trabeculoplasty)に代わり合併症を減らすため,従来の SLT よりも出力を下げた閾値下 SLT の効果が検
証されるようになり,2005 年から IQ 577TM laser(Micro Pulse P3 Glaucoma Devise,IRIDEXⒸ,
CA,USA)を用いた MLT が緑内障のレーザー治療として行われるようになった:とのこと。

◎ 「流出路再建術の最新事情」を谷戸正樹先生が解説している。谷戸先生は谷戸式フックの開発者として知られる。「要旨」:MIGS は,低侵襲(minimally-invasive glaucoma surgery),小切開(micro-incisional glaucoma surgery)を特徴とする一連の術式で,侵襲の低い治療と効果の高い治療の間を埋める適応(middle-indicative glaucoma surgery)を有する眼圧下降治療として登場した一連の緑内障術式で
ある。本邦では,流出路再建術を基盤としたMIGS 術式が主流である。MIGS の登場により,緑内障治療戦略が,より早期の手術介入へとシフトしている。生涯にわたる緑内障管理を考えた場合,MIGS 術式の臨床的有用性は高い。病型と目標眼圧に基づいた適応決定,手術・術後管理の実施が適切に行われることが肝要である。結語で:著者はMIGS の登場により,緑内障治療戦略が,より早期の手術介入へとシフトしている。生涯にわたる緑内障管理を考えた場合,MIGS 術式の臨床的有用性は高い。MIGS を行う前提として,病型診断が適切に行われていること病期と余命を考慮した上で目標眼圧が設定されていること適切な手術手技が習熟されていること術後の管理体制ができていること,が肝要である

清澤の感想:私は既に白内障や緑内障の手術的治療からは手を引いているのだが、白内障手術の時にMIGSを併用するかどうかが、これからは診療方針立案のポイントになるだろうと感じた。それには、緑内障を合併した患者では、MIGSをも治療選択肢に含む白内障手術医を紹介先に選ぶのが良いのかもしれないとも感じた。MIGSも眼科医が施行するならば、それなりの指導医の元で修練を始める必要がある手技と言えよう。

◎ 濾過手術・チューブシャント術の最新事情は折井佑介先生(福井大学)が説明している。なおこの記事は日本眼科医会のHPでは何故かまだ検索できませんでした。

要旨:近年、手術用デバイスの発展は目覚ましく、ロングチューブシャント手術も増加傾向であるが、最近国内でもプリザーフロ®マイクロシャントが承認され、更に選択肢は広がっている。今回は、流出路再建術、ロングチューブシャント、マイクロシャントにつて、その強み、弱みを元にどのように選択してゆくべきかについて説明した。

1,これまでの濾過手術

 1,線維柱帯切除術

 2、チューブシャント術 

  1)バルベルト緑内障インプラント 合併症(過剰濾過、角膜内皮障害、チューブやプレートの露出、複視)

Ⅱ、プリザーフロ®マイクロシャント(2022年に国内承認)前兆8.5㎜チューブ状で、チューブの切断は禁。

 

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