緑内障

[No.1369] 効果的なひと言で受診継続をうながす:という順天堂大学平塚義宗先生の記事紹介

効果的なひと言で受診継続をうながす:という順天堂大学医学部眼科学講座 平塚義宗先生の記事が日本の眼科1月号に出ていました。平塚先生は眼科公衆衛生の大家。患者と医師の「情報の非対称性」、「視機能異常もなく,治療の必要もないという状態なので,通院継続の必要性が腹落ちしていないと,再受診する動機が得られません。」確かにそうでしょう。緑内障の患者さんには務めて説明を厚くして再診を促す事としましょう。

  ーーー抄出ーーーー

 AMD の導入期に 3 回硝子体注射を行ったところ,視力は初診時の 0.8 のまま。注射継続を勧めるも,本人は「注射しても変わらない」と考え,受診中断。1 年後の
再来時にはポリープ病変が悪化,視力は 0.1。ーーー医師側の認識は「注射してたから,変わらないでいられたのに」。
 このような認識のギャップはまだレベルの高いほうで,現実にはもっと大きな溝が存在します。---- 眼科ではどんな検査をしてくれるのか,誰も知りません。昼も夜も眼科の我々は,もはや一般感覚がイメージできません。このギャップを格好良くいうと「情報の非対称性」といいます
 さて,眼科定期受診の重要性は論を俟ちませんが,それは我々の独善的な考えであって,一般の人には「そりゃ,なんでも,そうでしょうねえ」程度のものです。特に自覚症状のない人に,また検査に来て下さいと指導する場合,結構なハードルが設定されます。どうして再検査が必要なのか,通院を継続すると何がよいのか,納得するには満足のいく説明が必要とされます。こうした病態は意外に多く,糖尿病網膜症,視神経乳頭陥凹拡大や高眼圧,ドルーゼンなど黄斑変性の前駆病変がみられる場合などが挙げられます。いずれも自覚症状がなく,視機能異常もなく,治療の必要もないという状態なので,通院継続の必要性が腹落ちしていないと,再受診する動機が得られません。眼科の受診中断は,「時間がない」の 1.8 倍に対して,眼疾患に関する「知識不足」では 3.2 倍に増えると報告されています。
「また行かないとな」と心から納得するための「知識」が必要なのです。
 では,どんな知識が有効でしょう。ちょっと意外だったり,具体的な数字が入っていたり,身近なお話だったり,現実の例を挙げたりするのが有効でしょう。そこで,自分なりの必殺の一言を用意しておくのはどうでしょうか。前視野緑内障ならば,「加齢でどんどんリスクが上がり,70 歳以上では 10 人に一人が緑内障です」「片方の視野が欠けてきても,両目で見ると補塡されて気づかない恐ろしい病気です」など,どうでしょうか。「普通の人の 1.7倍交通事故を起こしやすくなります」というのも良さそうです。糖尿病網膜症ならば,「血糖管理がいい加減だと,本当に両眼とも失明します。そういう人を何人も見てきました」,「透析になって,脳梗塞と心筋梗塞を同時に起こします」など,どうでしょうか。ちなみに,糖尿病患者で眼科受診を中断する危険因子は男性,若年,2 型,診断からの期間が短いです。そういう人には,ことさら口うるさく説く必要があります。
 めでたく再受診した人は積極的にほめましょう。「ちゃんと 1 年後にいらっしゃいましたね。素晴らしいですね」のひと言で,きっと来年も会うことができます。

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