コンタクトレンズ・眼鏡処方

[No.3341] 成人の視力検査及び眼鏡処方に関する手引き(第3回めです):4章.眼鏡処方の実際(非疾患眼)

清澤のコメント:眼鏡処方は眼科医療者にとって最も基本的かつ必要な項目です。その手引きが日眼会誌に発表されたのを機会に本文を見ることをお勧めしますが、内容のあらましを纏めてみます。第1回で第1章:検査と処方のコンセプト、第2章:視力の測定法を纏めました。そして第2回では第3章の成人眼鏡処方に関する基本的検査を纏めました。今回は第3回めで第4章眼鏡処方の実際(非疾患眼)(P163-174:11ページ分)に進みます。その中の6)プリズム眼鏡の部分は(P174-180:7ページ分)もありますから次回とします。

ーーーー概要ですーーーーーー

4.眼鏡処方の実際(非疾患眼)

1)遠視

1)遠視の定義と特徴

遠視(hyperopia)とは、遠くからの光が網膜の後ろに焦点を結ぶ屈折異常のことです。これは角膜や水晶体の屈折力が弱い、または眼球の前後の長さ(眼軸長)が短いことが原因です。遠視の人は、特に近くのものを見るときに目が疲れやすく、視力が不安定になることがあります。遠視が強い場合、調節力で補えず視力が低下することもあります。

2)眼鏡処方のタイミング

遠視の人は、若いうちは目の調節力が強いため自覚症状が少ないことがあります。しかし、調節力が低下すると、

  • 近くの文字がぼやける
  • 長時間の読書やスマホ使用で目が疲れる
  • 夕方になると視界がかすむ といった症状が現れます。

眼鏡をかけることで、

  • 目の負担が軽減される
  • 近くも遠くも快適に見える といったメリットがあります。特に40歳を過ぎると調節力が低下し、眼鏡が必要になることが多いです。

3)処方度数の設定

遠視の眼鏡度数は、調節力を考慮して設定します。

  • 若年者:完全矯正(調節麻痺検査で正確に測定)
  • 中高年:調節力を考慮し、低矯正も選択肢 眼鏡をかけた際の快適さを重視し、必要に応じて動的検影法などで調節負担をチェックします。

2)近視(単純近視)

1)近視の定義と特徴

近視(myopia)は、遠くの光が網膜の前に焦点を結ぶ状態です。眼軸が長い「軸性近視」が主な原因で、多くは成長とともに進行します。軽度であれば遠くがぼやける程度ですが、強度になると近くも見えにくくなります。

2)眼鏡処方のタイミング

視力0.7以下になると、

  • 黒板の文字が見えにくい(学生)
  • 夜間運転時に標識がぼやける(成人)
  • 目を細めると見やすい などの症状が出るため、眼鏡を考えます。

3)処方度数の設定

近視の眼鏡は、基本的に完全矯正を推奨します。ただし、

  • 目の疲れが強い人
  • 近くを見る機会が多い人 には、低矯正を選択することもあります。過矯正(強すぎる度数)は避け、調節ラグの確認を行います。

3)乱視

1)乱視の定義と特徴

乱視(astigmatism)は、角膜や水晶体の形状の歪みが原因で、焦点が一点に結ばれない状態です。軽度なら問題ありませんが、強度になると、

  • 夜間の光がにじむ
  • 目の疲れがひどい
  • どの距離でもピントが合いにくい といった症状が出ます。

2)処方度数の設定

乱視の眼鏡度数は、

  • 試しがけで装用感を確認
  • 強すぎると歪みを感じるため調整 を行い、快適な度数を選びます。

4)不同視

1)不同視の定義

左右の度数差が1.00D以上ある状態を不同視(anisometropia)と呼びます。軽度なら問題ありませんが、

  • 目の疲れ
  • ものが二重に見える といった症状が出る場合、眼鏡で矯正します。

2)矯正方法

  • 眼鏡での矯正:度数差が2.00D以内なら可能
  • コンタクトレンズ:2.00D以上の差がある場合推奨

不同視は不等像視(左右の像の大きさが異なる現象)を引き起こすため、慎重に処方します。

5)老視(老眼)

1)遠近・中近・近々眼鏡の適応と処方

老視(presbyopia)は、加齢による調節力の低下が原因で、近くが見えにくくなる状態です。主な矯正方法として、

  • 近用単焦点レンズ(読書・スマホ用)
  • 遠近両用レンズ(運転や買い物時にも便利)
  • 中近レンズ(デスクワーク向け)
  • 近々レンズ(パソコン作業が多い人向け) があります。

2)処方のポイント

  • どの距離を重視するかを確認
  • 使う時間や生活スタイルを考慮
  • 遠視の人は早めの眼鏡使用が適応

老視は早めに眼鏡を使うことで、快適な視生活を送ることができます。

6)プリズム眼鏡 (この項目は後述とします)

まとめ

眼鏡の処方は、単に視力を矯正するだけでなく、

  • 目の負担を軽減する
  • 生活の質を向上させる ことを目的とします。特に、
  • 遠視は調節負担を考慮して処方
  • 近視は過矯正を避ける
  • 乱視は試しがけで快適さを確認
  • 不同視はコンタクトレンズの併用を検討
  • 老視は用途に応じたレンズ選択 が重要です。

適切な眼鏡処方により、快適な視生活を送るためのサポートが可能になります。

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