「緑内障」と「白内障」は何が違う? 治療と対策で知っておくべきポイント
3/11(火) 9:06配信 日刊ゲンダイ
記事の要点:緑内障と白内障は異なる病気で、中高年に多い。緑内障は眼圧上昇などで視神経が障害され、視野が狭くなり失明の恐れがある。一方、白内障は水晶体が濁り、視界がかすむ。緑内障の治療は眼圧を下げる点眼や手術で、進行を防ぐことが目的。白内障は手術で視機能を回復できる。両疾患を併発する場合、治療法の選択が重要で、手術の適応は慎重に判断すべき。緑内障は完治せず、長期管理が必要。3月9~15日は世界緑内障週間で啓発活動が行われる。岩瀬院長は元多治見市民病院勤務時代に緑内障学会の多治見スタディー(緑内障に関する日本で初めてのフィールドスタディー)を行う事を主導した有名な医師です。
ーーーーーーー記事抜粋ーーーーーーーーーー
加齢とともに増える目の病気が緑内障と白内障だ。名前が似ているこの2つの病気、その違いは?ちょうど今は世界緑内障週間。知っておきたいことを「たじみ岩瀬眼科」の岩瀬愛子院長に聞いた。
■どちらも中高年でリスクが高くなる
「緑内障と白内障は混同されることも多いのですが、全く違う病気です」(岩瀬院長=以下同)
緑内障は、眼圧の上昇や加齢などで目と脳をつなぐ視神経が障害される病気だ。対して白内障は、目のレンズの役割を果たしている水晶体が、加齢とともに濁っていく病気である。
症状の違いとして、緑内障は、徐々に視野が狭くなり、治療を受けずにいると失明に至ることもある。白内障は、視界が全体的に徐々にかすむようになり、見えづらくなったり、ものが二重に見えたり、光をまぶしく感じたりするようになる。
「緑内障の治療は基本は点眼薬、場合によってはレーザーや手術で眼圧を下げます。白内障は症状の進行を抑えるために点眼薬を使うこともあるものの、治療の基本は手術。日常生活に支障が出るようになったタイミングで、手術によって濁った水晶体を取り除き、眼内レンズと交換します」
緑内障と診断された患者から「手術で治るんですよね?」という質問が出ることもあるそうだが、残念ながら緑内障は手術で治らない。点眼薬でも治らない。
「緑内障で障害された視神経は元には戻らず、失った視機能は取り戻せません。緑内障の手術は、これ以上視神経の障害が進まないよう、眼圧を下げることが目的です。しかし白内障の場合は手術できれいな眼内レンズに換わりますから、発症前と同様の視機能を取り戻せます」
緑内障と白内障の両方を併発している人も少なくない。そういう場合は、緑内障には緑内障の治療、白内障には白内障の治療が行われる。注意が必要なのが、「白内障手術のついでに眼圧を下げる緑内障の手術もやりましょう」という安易な提案だ。最近、緑内障治療を専門とする眼科医の間で問題視されている。
「同時手術が適切な患者さんもいますが、そうではない患者さんもいる。同時手術か、あるいは別々に行うかは、一人一人異なるのです。選択を間違うと視機能に問題が生じる恐れもあります」
緑内障を放置すれば失明に至ることも
そもそも緑内障には、専門医であっても「緑内障を疑うが、判断に迷う」といったケースがあり、そういう場合は長期にわたり様子を見ることになる。
「緑内障疑いの段階で眼圧を下げる手術をすれば、過剰医療になってしまう。同時手術を提案されたらその根拠をしっかり確認すべきです」
これとは別に、手術に関連して押さえておきたいのが、「緑内障のために、白内障手術をする」場合があることだ。
「緑内障の中には、隅角が狭いために起こっている閉塞隅角緑内障といわれる型があります。この場合は、目の中の水(房水)の通り道である隅角が狭くなり、眼圧が上昇しているので、緑内障があるなら、白内障による症状はさほどひどくなくても、緑内障のために水晶体を取り除いて眼内レンズに換える手術が適応となります。しかし、緑内障の知識がしっかりある専門医でのしっかりした診断が必要。この手術についても安易に行うものではありません」
なお繰り返しとなるが、現時点では緑内障は完治する病気ではないので、手術後も「これで治療は終了」とはならない。その後も長期の管理が必要となる。
※今年の3月9~15日は世界緑内障週間。日本緑内障学会による啓発活動として、全国の公共機関などが緑色にライトアップされる。意味するのは、緑内障にとって早期発見と治療継続が大切であり、希望を持って取り組みましょうというメッセージだ。
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