小児の近視進行を抑制するのに「外遊び(屋外活動)」が有効であるというお話
清澤のコメント:小児の近視進行を抑制するのには「外遊び(屋外活動)」も有効です。その機序として、① 光刺激によるドーパミンの分泌、② 瞳孔縮小によるピント調整の負担軽減、③ 体内時計(概日リズム)の調整が考えられています。「1日2時間以上の戸外活動」を日本眼科学会は小児近視の予防策として公式に推奨しています。
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小児の近視進行を抑制するのに「外遊び(屋外活動)」が有効であることは、多くの研究で示されています。その作用機序と有効性について以下に説明します。
【外遊びの作用機序:なぜ屋外活動が近視進行を抑えるのか】
- 光刺激によるドーパミンの分泌
- 明るい太陽光(照度1万ルクス以上)は、網膜でのドーパミンの分泌を促進します。
- ドーパミンは眼軸長の過剰な伸長を抑制する神経伝達物質であり、動物実験でも近視進行を抑制する因子として知られています。
- このため、明るい環境に身を置くこと自体が眼の成長をコントロールする要因と考えられます。
- 瞳孔縮小とピント調整の負担軽減
- 屋外では明るさにより瞳孔が縮小し、被写界深度(焦点の合う範囲)が広がるため、ピントが合いやすくなります。
- その結果、眼内の調節(毛様体筋)の緊張が軽減され、近視進行に関与する「持続的な近方作業」の影響が和らぎます。
- サーカディアンリズムと成長ホルモン
- 太陽光による体内時計(概日リズム)の調整も、全身の健康に良い影響を与え、眼の成長バランスにも関与している可能性があります。
【屋外活動の効果:どの程度有効か?】
■ 国際的な研究報告
- 代表的な研究として、台湾のWu et al. (2013) の研究では、小学校で毎日屋外活動時間を1日平均80分から120分に増やした結果、2年間で近視の新規発症率が17.7%から8.4%に半減したことが報告されています。
- Rose et al. (2008)(オーストラリア)の研究では、1日あたり2時間以上の屋外活動で、近視の進行リスクが大幅に減少することが確認されています。
■ 日本眼科学会の推奨
- 日本眼科学会は、**「1日2時間以上の戸外活動」**を小児近視の予防策として公式に推奨しています(※2021年提言)。
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