白内障最新治療のやさしい解説(JAMA 2025年4月14日号より)
背景
白内障は、眼の中の「水晶体」が加齢や病気によって濁る病気で、視力が低下していく状態です。痛みはありませんが、進行すると視界がかすんだり、まぶしさが強くなったりします。世界的に見ても失明原因の上位で、日本を含む高所得国では手術が非常に一般的です。米国では年間350万件以上の白内障手術が行われています。
目的
今回の総説は、加齢性白内障の原因、危険因子、診断、手術適応、手術方法、合併症予防、そして最近の高機能眼内レンズ(IOL)の活用について、最新知見をまとめることを目的としています。
方法
著者らは過去の疫学研究、臨床試験、手術成績報告などを幅広くレビューし、白内障の発症メカニズムから最新治療までを整理しました。特に米国の高齢化社会での発症予測や、手術に関するエビデンスを重点的に検討しています。
結果
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発症率と予測:80歳以上の約3分の2が白内障に罹患。米国では2050年までに患者数が5,000万人に達する見込み。
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危険因子:加齢が最大要因。ほかに遺伝素因、長期ステロイド使用、眼外傷、強い紫外線曝露、放射線治療、糖尿病、網膜色素変性症、ダウン症、先天性風疹など。
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症状:痛みのない進行性の視力低下、かすみ、まぶしさ。
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診断:眼科検査で確認。
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手術適応:日常生活に支障が出た場合。転倒率の上昇(>30%)、認知機能低下(20~30%)との関連あり。
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手術法:局所麻酔下で行うため、一般的な術前検査や抗凝固薬の中止は不要。タムスロシンなど一部薬剤は術中合併症を増やす可能性があるため注意。
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感染予防:術中の眼内抗生物質(モキシフロキサシン等)投与で眼内炎発症率を0.07%→0.02%に低減。
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術後の利点:視力回復だけでなく眼鏡依存度の低下も可能。多焦点IOLなどの高度レンズで遠近両方をカバーできるが、保険適用外で費用増。
考案
白内障は加齢とともに避けがたい病気ですが、早期診断と適切な手術により、視力を回復し生活の質(QOL)を改善できます。また、転倒や認知機能低下のリスクを減らす可能性もあります。一方で、多焦点IOLなどの先進医療は費用が高く、眼精疲労やハロー・グレア(夜間の光のにじみ)などの副作用もあるため、患者ごとの生活スタイルや希望に沿ったレンズ選択が重要です。
結論
白内障は高齢者に多く、放置すると失明につながります。手術は安全性が高く、視力と生活の質を改善できる有効な方法です。先進レンズの活用により、眼鏡から解放される可能性もありますが、費用と副作用のバランスを考慮する必要があります。
出典
Chen SP, WoldeT, Chang DF. Cataract. JAMA. 2025;333(23):2093-2103. doi:10.1001/jama.2025.1597
院長清澤コメント
白内障は、視力の「かすみ」や「まぶしさ」をゆっくり進めていく病気ですが、手術で確実に改善できる数少ない眼疾患です。近年は安全性が高まり、術後の満足度も向上しています。私は患者さんに「我慢して見えない生活を続けるより、適切な時期に手術を受けることが、心身の健康維持にもつながります」とお伝えしています。
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