全身病と眼

[No.3976] 成人の2型糖尿病の診断と治療 ― 最新レビューから見える課題と展望

成人の2型糖尿病の診断と治療 ― 最新レビューから見える課題と展望

かなり論じつくされた話題ではありますが、2型糖尿病は、インスリン抵抗性と膵β細胞の分泌能低下が組み合わさることで起こる病気です。糖尿病全体の約9割を占め、世界で5〜8億人が罹患していると推定されます。米国では成人の6人に1人が2型糖尿病とされ、日本を含め世界的に公衆衛生上の大きな課題となっています。患者のおよそ3分の1は心血管疾患を合併し、さらに腎不全や失明といった重篤な合併症を招くリスクも高く、生活の質に大きく影響します。

診断の基準は、空腹時血糖値126mg/dL以上、HbA1c6.5%以上、もしくは75gブドウ糖負荷試験での2時間値200mg/dL以上のいずれかですリスク因子には、高齢、家族歴、肥満、運動不足、妊娠糖尿病の既往、人種背景などが知られています

治療の基本は生活習慣の改善です。食事療法については特定の方法が「最善」とはまだ断定できませんが、体重管理は重要とされます。運動はHbA1cを0.4〜1.0%程度低下させ、血圧や脂質異常の改善にも効果があります。しかし生活習慣改善だけでは十分でない場合が多く、薬物療法が必要となります。

第一選択薬はメトホルミンです。ただし心血管疾患や腎疾患を持つ、あるいはそのリスクが高い患者では、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬の早期導入が強く推奨されます。近年のエビデンスでは、これらの薬剤が心筋梗塞や心不全、慢性腎臓病のリスクを2〜5年のうちに2〜4割も減少させることが示されています。また、GLP-1RAやデュアルGIP/GLP-1RAは体重減少効果も強く、肥満を伴う糖尿病治療において重要な役割を担います。最終的には3分の1の患者がインスリン治療を必要とすることもあります。

血糖コントロール目標として、HbA1cを7%未満に維持する集中的な治療は、長期的に微小血管障害(網膜症・腎症など)や心筋梗塞、死亡率を減らすことが示されています。例えば網膜症の発生は3.5%、心筋梗塞は3.3〜6.2%、死亡率は2.7〜4.9%減少するとの報告があります。眼科医の立場からは、網膜症は微小血管障害の代表であり、血糖コントロールの良否が視力予後を大きく左右します。新しい薬剤が心血管や腎の合併症だけでなく眼の合併症予防にも寄与する可能性は注目に値します。

2型糖尿病は世界人口の約14%に影響を与える深刻な病気です。生活習慣の改善を基本としつつ、適切な薬物を早期に導入することで、合併症や死亡率を大幅に下げることができるようになってきました。眼科領域においても糖尿病網膜症は失明の主要原因であり、糖尿病治療の進歩が眼の健康を守るうえでも重要です。患者さんと内科・眼科の協力により、長期的な合併症の予防と生活の質の維持を目指すことが求められます。


出典

Kalyani RR, Neumiller JJ, Maruthur NM, Wexler DJ, et al. Diagnosis and Treatment of Type 2 Diabetes in Adults: A Review. JAMA. 2025.6; DOI: 10.1001/jama.2025.5956

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