小児の眼科疾患

[No.3977] 子どもの近視 ― 最新研究から見えてきた近視対策

子どもの近視から ― 最新研究から見えてきた近視対策

近視は日本を含む東アジアで急速に増えており、子どもの視力低下や大人になってからの眼の病気に深く関わっています。最新のJapanese Journal  of Ophthalmology(JJO)に発表された研究から、近視に関する新しい知見を3つご紹介します。


① アトロピン点眼とAIによる近視進行予測

子どもの近視が進むのを抑える方法として、アトロピンという点眼薬が世界中で研究されています。特に0.01〜0.125%といった低い濃度のアトロピンが副作用も少なく、安全に使えるとされています。

今回の研究では、単に「効いた」「効かなかった」を調べるだけでなく、AI(人工知能)を使って、子ども一人ひとりの近視進行を予測しました。その結果、アトロピン0.125%は多くの子どもで近視の進み方を抑える効果があり、またAIモデルを使うことで「この子はどの程度効果が出そうか」を事前に推定できる可能性が示されました。

つまり、将来はお子さんの近視のタイプや進み方に合わせて、よりオーダーメイドな治療ができる時代が来るかもしれません。


② 正視の子どもでも近視のリスクは測れる

次に紹介するのは「まだ近視になっていない小学生」を対象にした研究です。子どもの目の長さ(眼軸長)や角膜の形を詳しく調べ、将来近視になるリスク因子を分析しました。

結果として、眼軸がやや長い、角膜のカーブが強いなどの特徴を持つ子どもは、将来的に近視を発症する可能性が高いことが分かりました。

この研究が意味するのは、視力が良いうちから近視予防の手を打つことができる、という点です。たとえば、戸外での遊び時間を増やす、読書やスマホ・ゲームの時間を調整する、といった生活習慣の工夫がより効果的に使えるかもしれません。


まとめ

今回ご紹介した研究は、近視の 予防・進行抑制という2つの場面をカバーしています。

  • 子どもでは アトロピン点眼+AI予測 により、より個別化された近視進行対策が期待される。

  • 正視の子どもでも 眼軸などの測定から近視リスクを予測 できる。

近視は単なる「視力の問題」にとどまらず、一生を通じて目の健康に関わるテーマです。お子さんの時期から将来までを見据えて、早めの予防と適切な治療を心がけていきたいものです。


👉 出典:Japanese Journal of Ophthalmology, Vol.69, Issue 5


清澤のコメント:

今回の特集は、私が日々患者さんに説明している「近視の進行予防」「予測」といった流れを裏付ける内容で、とても実臨床に役立ちます。特にアトロピン点眼とAIの組み合わせは今後の大きな可能性を感じます。

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