鼻先が赤くなる「酒さ」とその原因・対処法
~薬や食べ物との関係、霰粒腫とのつながりも含めて~
鼻の頭や頬が赤くなる「酒さ(しゅさ、rosacea)」は、見た目の問題から気にされる方が多い皮膚の病気です。特に中年以降に目立つことが多く、「お酒の飲み過ぎでは?」と誤解されがちですが、必ずしもそうではありません。ここでは、酒さの原因や生活との関わり、そして霰粒腫(さんりゅうしゅ)との関連について解説します。
酒さとはどんな病気?
酒さは、顔の中心部に赤み、毛細血管の拡張、ぶつぶつや膿を伴う皮疹が出る慢性炎症性疾患です。鼻先に赤みが集中すると「赤鼻」に見え、重症例では鼻が丸く肥厚する「鼻瘤(びりゅう)」に進展することもあります。
酒さの原因と悪化要因
酒さの正確な原因はまだ分かっていませんが、以下の要素が関わっていると考えられます。
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血管の反応性の異常:毛細血管が拡張しやすく、些細な刺激で赤くなります。
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皮膚の炎症反応:免疫系の異常や炎症物質の増加が関与します。
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ダニや菌の関与:毛包虫(ニキビダニ)や皮膚常在菌が症状を悪化させることがあります。
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環境や生活習慣:紫外線、寒暖差、精神的ストレスなどが誘因となります。
内服薬や食品との関係
患者さんが「この1年で悪化した」と訴える場合、薬や食生活の影響を考慮することも重要です。
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薬剤:ステロイド外用薬の長期使用は酒さ様皮膚炎を招くことがあります。また、一部の降圧薬(カルシウム拮抗薬)、血管拡張薬、ニコチン酸、コルチコステロイドの内服も顔の紅潮を助長することがあります。
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食品・嗜好品:アルコール、辛い料理、熱い飲み物、カフェインなどは血管拡張を引き起こし、赤みを悪化させることが知られています。
このように、薬や食品は「原因」というより「悪化因子」として作用しやすいと理解すると分かりやすいでしょう。
酒さと霰粒腫の関係
この患者さんには慢性の霰粒腫があり、切開処置を受けても消えず、当院で切除を行った経過があります。霰粒腫はまぶたのマイボーム腺が詰まって生じる炎症性のしこりです。酒さの患者さんはしばしば「眼型酒さ」と呼ばれる病態を伴い、眼瞼炎や霰粒腫が繰り返しやすいことが知られています。つまり、鼻や頬の赤みとまぶたの霰粒腫は、同じ体質的背景(皮脂腺やマイボーム腺の炎症傾向)から現れている可能性があるのです。
対処法
生活習慣での工夫
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紫外線を避け、日焼け止めを使用する
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熱い飲食物、香辛料、アルコールを控える
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急激な温度変化を避ける
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肌に刺激の少ない洗顔や保湿を心がける
医学的治療
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外用薬:メトロニダゾールやイベルメクチンクリームは炎症を抑え、ブリモニジンゲルは血管の拡張を一時的に抑えます。
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内服薬:テトラサイクリン系抗菌薬を低用量で使うと抗炎症作用が得られます。
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レーザー治療:赤みの原因となる拡張した血管を破壊する治療が有効です。
霰粒腫に関しては、繰り返す場合にはマイボーム腺機能不全の評価や、酒さ眼の可能性を踏まえた治療が望まれます。
まとめ
酒さは単なる「赤鼻」ではなく、血管や皮脂腺の反応異常が関与する慢性疾患です。薬や食事が直接の原因になるわけではありませんが、特定の薬剤や嗜好品は症状を悪化させる可能性があります。また、霰粒腫を繰り返す患者さんでは酒さ眼の存在が疑われ、皮膚の赤みと眼の症状が共通の背景から生じている場合もあります。
👉 清澤のコメント
眼科で霰粒腫の処置をした際に「鼻先の赤み」も同時に相談を受けることがあります。その場合は、皮膚科と連携して酒さの診断・治療を受けることをお勧めします。生活習慣の見直しと適切な薬物療法により、多くの患者さんで改善が期待できます。
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