ご近所の話題

[No.4110] 金木犀:

秋の深まりを感じるこの時期、自宅近くのひときわ大きな キンモクセイ(=金木犀)の木に、なんと多数の“金木犀マーク”の缶飲料が飾られているのを見かけました。今回はその金木犀をテーマに、一般解説とトリビア、さらに眼科医らしいちょっとした話題、そしてその缶飲料についても触れてみたいと思います。


金木犀の一般的な解説

金木犀は、モクセイ科モクセイ属に属する常緑の小高木です。学名は Osmanthus fragrans var. aurantiacus で、日本では秋(9~10月頃)にオレンジ色の小さな花を枝にびっしりつけ、あたりに甘く芳しい香りを漂わせることから、“秋の訪れを告げる木”として親しまれています。

葉は光沢のある深緑色で、花の時期以外では比較的目立たない緑の樹形をしています。名前の由来についても興味深く、「金木」の金は花の色(橙~金色)、「犀(サイ)」は樹皮の様子がサイの皮膚に似ているという説があります。

栽培面では比較的丈夫な樹木で、日当たりの良い場所を好み、乾燥にはやや弱いという特徴があります。剪定や管理も容易で、公園や街路樹・生垣としても多く植えられています。


花にまつわるトリビア

金木犀には「香り」や「季節感」に関して、いくつかユニークなエピソードがあります。

  • 日本では「三大香木(さんだいこうぼく)」の一つとされ、春の ジンチョウゲ、初夏の クチナシ と並び称されるほど、香りの強さが特徴です。

  • 日本に植えられている金木犀の多くは、実(果実)をつけません。これは、移入当初に雄株のみが持ち込まれ、その後挿し木などで増やされたため「実をつける雌株」がほとんど存在しないためとされています。

  • 香りがどこか懐かしく感じるのは、科学的にも「記憶を司る脳の部位(海馬・扁桃体)と嗅覚が近いため、香りは過去の記憶・感情と結びつきやすい」という説があります。つまり、金木犀の香りに“秋の思い出”を感じるのは、単なる印象以上のものがあるのです。

  • 花期が意外と短いのも特徴で、咲き始めてから数日~1週間程度で散り始めることもあります。「見つけたら早めに香りを楽しんでくださいね」と園芸専門情報でも言われています。ガーデンプラス+1

また、花言葉としては「謙虚」「初恋」「陶酔」などがあり、強い香りを放つ一方で小さな花を密集させて咲かせる姿に「謙虚」の意味が込められていると言われています。


眼科医からみる“香り”と“目・瞳”のリンク

普段診療していると、季節の変化とともに目の調子を崩される患者さんも少なくありません。例えば、秋になって乾燥が進むとドライアイを訴える方が増えます。金木犀の香りが漂うこの頃は空気も少し冷え、湿度が下がっていきますので、まぶたの裏側や涙の状態を整えるケアが大切です。

また、「香りが目の疲れを和らげてくれる」という報告もあります。気分がリラックスするとまばたきが自然と増え、涙の蒸発を防ぐ助けになるからです。金木犀の香りを受け止めて、ほんの少しだけ「目を閉じて香りを味わう時間」をつくるのも、視覚疲労ケアとしておすすめです。もちろん、香りが強すぎて「目がしみる」「涙が出る」と感じられる方は、風上に立たない、また換気をするなどして香りの濃度を調整してください。

さらに、金木犀が街中で香る時期には、花粉・香り・空気の変化によるアレルギー症状(目のかゆみ、充血、涙目)も起こり得ます。香り自体がアレルゲンというわけではありませんが、花粉や微細な香りの揮発成分・空気の乾燥が複合して目の表面を刺激することがありますので、目薬(涙液補充型)や保湿サングラスなどを使って予防をしていただくと良いでしょう。


“金木犀マーク”の缶飲料について

ご近所の木に飾られていた缶は、“金木犀のマーク(または名称)”を冠した秋季限定の缶飲料でした。調べてみると、 金麦〈帰り道の金木犀〉という商品が、サントリーホールディングスから2025年9月16日より全国で秋季限定発売されたことが確認されています。この缶の特徴としては、「甘く爽やかな香り」を意識したアンバーエールタイプで、液色も秋の夕暮れをイメージしたものに仕上げ、パッケージにも金木犀のモチーフがデザインされているとのことです。なお、商品名に「金木犀」とありますが、原材料に金木犀の花が使われているわけではない旨も明記されています。つまり、季節感・情緒を演出するためのネーミング・マーケティング戦略というわけです。街なかの大きな金木犀の木にその缶が飾られているのも、「秋の香り=金木犀=この缶」という連想を視覚的にも演出する地域のひとコマなのだと感じました。


結びに

街中を歩いていて、ふと鼻をくすぐるあの橙色の小さな花と甘い香り。金木犀は、目にはあまり大きく写らなくても(小さな花が密集しています)、その香りで「秋だな」と感じさせてくれる、優しい存在です。そして「目」で季節の変化を感じるだけでなく、「鼻(香り)」や「体(湿度・空気の変化)」と連動して視覚・眼のコンディションにも影響を与えています。どうぞ、金木犀の香りを楽しむとともに、目のケアも少し意識してみてください。

また、近くで見かけた“缶飲料”の飾り付けも、ちょっとした街のディテールとして、日常に季節を添えてくれているようです。今後、患者さんと「金木犀が咲いてましたね」と話題にするのも良いスタートになるかもしれません。

それでは、皆さまどうぞ、秋の香りとともに目と心をリフレッシュされてください。次回のブログもよろしくお願いいたします。

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