手拳ないしボクシンググラブによる眼外傷
知り合いの眼科医から、ボクシングによる外傷で瞼の腫れが強く、鼻出血を伴っているという症例について相談されました。
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ボクシングによる眼部打撲では、瞼の腫れが強く、皮下出血が瞼の皮下にたまっていることもあるでしょうから開瞼も不良で、初診時の眼評価が難しいこともあるでしょう。腫れが引いたら複視があったという可能性もあるでしょう。
このような外傷眼に起こりうる病変を列挙してみます。
- 眼瞼浮腫および眼瞼皮下出血:通常は腫れが引くのを待てば収まるでしょう。温罨法で温めると腫れの引きは促進できるかもしれません。
- 眼球破裂:角膜輪部付近と、薄い直筋の下の強膜が薄い場所とが眼球破裂の好発部位です。眼圧は低いでしょう。麻酔して結膜を開き、強膜を露出して裂けた部位を同定してから、縫合することが必要です。その先は網膜剥離の処置が必要です。
- 隅角乖離、虹彩離断:前方からの打撲で眼球が変形すれば虹彩と角膜周辺部の間の隅角または虹彩根部が裂けることがあります。それならば、前房に出血して、暫くすると前房の下方に血液がたまって鏡面を形成します。
- (図:https://www.pinterest.jp/pin/343540277800156036/)前房が出血で真っ黒なら、早期に手術で血液を洗わないと、角膜裏面の細胞が損傷してしまう可能性があります。またその時は良さそうでも後日に眼圧が上がり、緑内障に移行する可能性があり、注意を要します。
- 網膜剥離:通常の網膜裂孔を示す場合と、鋸状縁の断裂で巨大裂孔を起こす場合があります。網膜剥離なら大病院での手術が即時に必要です。
- 視神経障害:まれに視神経が断裂する、視神経抜去のケースの報告があります。
- 眼窩吹き抜け骨折:眼球が後方に押し込まれて眼窩内の圧力が上昇し、眼窩の内側壁または下壁が副鼻腔方向に押し出される骨折があります。ここに、筋が陥頓して動きが妨げられると強い複視を生じます。眼球の動きが悪ければ、CTかMRIで骨折部位を探します。骨折があれば眼窩吹き抜け骨折を扱いなれた形成外科に患者を渡します。この骨折があり、鼻出血がある場合に、患者が不用意に鼻をかむと、鼻腔内から空気が眼窩に吹き込まれて眼窩気腫になることがあります。
とまあ思いつくところを列挙してみました。
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