目の下のクマに対する「裏ハムラ法」とは
ボトックス治療中の患者さんの中には、治療によってまぶた周囲の筋肉の動きが弱まり、目の下の“影”が強調されてクマが目立つと感じる方がいます。これは皮膚のたるみや眼窩脂肪の突出、頬のくぼみが組み合わさった結果で、点眼やスキンケアでは改善しにくいことがあります。このような場合に眼形成外科で提案されることがあるのが裏ハムラ法(経結膜的ハムラ法)です。
1. 手術の適応
裏ハムラ法は以下のような方に向いています。
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目の下にふくらみ(眼窩脂肪の突出)がある
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その下にくぼみ(tear trough)が深く、影ができる
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皮膚の弛みは軽度で、皮膚を切りたくない
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クマが色素ではなく「影」によるもの
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ボトックス注射後に影が増したが、根本は脂肪とくぼみの段差が原因
皮膚表面を切らないため、傷跡を残したくない方にも適しています。
2. 手術の概要
裏ハムラ法は「脂肪を取る手術」ではなく、脂肪を適切な位置に移動して段差をなくす手術です。従来の脱脂術のように脂肪を減らすと、かえってくぼみや老けた印象が強くなることがあり、これを避けられるのが本法の利点です。
3. 術式(わかりやすい説明)
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麻酔
点眼麻酔と局所麻酔で行う日帰り手術です。 -
まぶたの裏側(結膜)を切開
皮膚に傷をつけないため、術後も外から切開は見えません。 -
突出した脂肪を露出
眼窩脂肪の内側・中央・外側の3つのパッドを確認します。 -
脂肪を“くぼみに移動”する
くぼみのある骨膜上にポケットを作り、脂肪を滑らせて移動します。 -
移動した脂肪を固定
溶ける糸で丁寧に固定し、ふくらみとくぼみを均します。 -
結膜の切開は自然閉鎖
多くは縫わずに自然に閉じ、抜糸は不要です。
腫れは1〜2週間で改善し、完成は数ヶ月後です。
4. 得られる効果
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影クマが改善し、疲れた印象が軽減
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ふくらみとくぼみの段差がなだらかになり、自然な若返り
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皮膚に傷が残らない
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ボトックスで強調されていた影にも有効
5. 眼瞼痙攣・片側顔面痙攣でボトックス治療を受けている方への注意点
裏ハムラ法はボトックス治療中でも施行できますが、いくつかの注意点があります。
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術後の腫れや内出血により、一時的にボトックスの効き方が変化して見えることがある。
これは一過性で、薬の効果自体が弱くなるわけではありません。 -
手術直後は注射部位の判断が難しくなることがあるため、ボトックスの次回投与は手術後4〜6週間ほど空けるのが一般的です。
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まぶたの支持組織が落ち着くまでの間、軽度の開閉障害や乾燥感が強く出る場合がある。
眼瞼痙攣の患者さんでは、筋肉バランスが変わると症状が一時的に揺れ動くことがあります。 -
片側顔面痙攣の患者さんでは、術後の左右差の評価に注意が必要で、初期は影や腫れによる見た目の差が出やすくなります。
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いずれも時間の経過とともに安定するため、術前に主治医と投与時期・調整計画を共有することが重要です。



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