眼科編(3)緑内障への誤解 「視野が欠ける」とどう見えるか
緑内障は中途失明原因第1位の眼病で、40歳以上の20人に1人、60歳以上なら5人に1人が罹患している–。そう説明してもピンとこない人が多い。それは緑内障への誤解があるからだ。最大の誤解が、緑内障を発症すると自覚する「視野が欠ける」の意味だ。「自由が丘清澤眼科」(目黒区)の清澤源弘院長が言う。
「患者さんに緑内障の初期の自覚症状について尋ねると『視野が暗くなって見えなくなる、つまり黒く欠けるのでしょ?』と回答される方がほとんどです。しかし、初期段階で起きることは『欠ける部分がぼんやりしてくる』です。英国の調査では、緑内障による視野の欠けは暗くなるというよりも、ぼやけて見えることが多いと報告されています。調査では、部分的にぼやけて見える人が54%、部分的に見えない人が16%でした。当然ですが、患者さん自身ではぼんやりした状態を自覚できません。だからこそ、緑内障の早期発見には眼圧、視野、眼底、ОCT(光干渉断層計)などの検査が欠かせません」
目の疲れから緑内障が発見されるのも、このぼんやりした状態を何とかハッキリ見ようと、知らず知らずのうちに目を凝らすからだ。
視野検査とは、白い半球ドームに正対して中心を凝視、ドームの壁に当てた光を判別する検査のこと。検査では光の位置や大きさ、明るさを変えることで障害されている目の場所や度合いを判別する。だから、同じ光の位置であっても、強い光なら見えるが、弱い光になると見えない、とすればそれは視野が欠けつつある場所と判定される。ところが、一般の人は強い光であれば視野に問題がないと考える。それが病気の進行の途上だとは考えない。
眼底検査は、目の奥に光を当て、視神経や網膜、血管などを調べる検査のこと。特に大事なのは視神経乳頭の観察だ。写真に撮って見ると、さらによくわかる。
「網膜に映った光の信号を束ねて脳に伝える視神経が眼底で集まるところ、乳頭の中心にはへこみ(陥凹)があり、血管や神経が出入りしています。この陥凹が拡大すると緑内障を発症することがわかっています」
眼底の神経線維(網膜)の厚みを調べるのがОCT検査だ。
「眼底検査と視野検査はともに定期的に受けるべき検査です。正常な人と比べて、どれだけ神経線維層が薄いかによって病気の進み具合を知ることができます。経過が進むにつれてOCT画像は病気が進行している部分が黄色になり、さらに進行すると赤色になります」
眼圧検査とは、眼球の張り具合を調べる検査のこと。目に「プシュッ」と空気を吹きかけて計測する。正常な人は10~21㎜Hgとされる。
「緑内障でも、眼圧が正常な正常眼圧緑内障が多く、眼圧検査だけで緑内障を除外判定することはできません。そのことには特に注意が必要です」
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