眼瞼痙攣と羞明 — FL-41遮光眼鏡による症状ケアの実際
眼瞼痙攣(BEB: benign essential blepharospasm)をはじめとする慢性の光過敏症では、羞明(光に対して過度に光を不快に感じ、日常生活に支障を来す状態)を訴える患者さんが少なくありません。明るい光の下では目を開けていられず、外出や屋外での活動、街灯の下での行動、室内照明でも不快感が強くなり、生活の質を大きく低下させることがあります。こうしたケースに対して、遮光・波長選択フィルタを用いた補助具が補完的に活用されることがあります。
当院では、ドイツの光学機器メーカーである エッシェンバッハ 機能性サングラス アクニス(Eschenbach社)の FL-41フィルター搭載遮光眼鏡(acunisシリーズ) を、羞明症状を訴える患者さんに紹介しています。
FL-41遮光眼鏡とは何か?
FL-41とは、特定の光の波長(主に青〜緑色光、約480〜520nm)を効率的に抑制するフィルタ技術を示す名称です。この特殊なフィルタは、「蛍光灯(FL:Fluorescent Lamp)」から命名されたとされ、光過敏症や片頭痛、眼瞼痙攣、外傷後の光感受性などに対して症状軽減効果が期待されています。
通常のサングラスや一般的な濃色レンズは全体の明るさを落としますが、FL-41フィルタは 光刺激の原因となりやすい波長域を特異的にカット し、色相が「ローズ(赤み)」を帯びることで、まぶしさを感じにくくする仕組みです。青緑色光は、眼の感光細胞や神経系に強い刺激を与えるため、これを減らすことで光刺激に起因する神経反応(不快感やまぶしさの誘発)を抑える効果があると考えられています。
国内外での研究では、FL-41レンズ装用により羞明や関連症状が軽減されたという報告があり、眼瞼痙攣患者でも装用によってまぶしさが改善した例が複数報告されていますが、効果には個人差があり、全ての症状に作用があるわけではありません。
エッシェンバッハ社の遮光眼鏡(acunisシリーズ)の特徴
エッシェンバッハ社はドイツの光学機器メーカーであり、視機能補助具やアイケア製品を長年扱ってきた企業です。その製品ラインナップの一つが、 FL-41フィルターを搭載した「acunis(アクニス)」遮光眼鏡 です。
1) 遮光レンズ
acunisのレンズには、FL-41フィルターが組み込まれており、青〜緑色光の透過率を低減することでまぶしさを軽くします。レンズは可視光の透過率に応じて3段階の 薄め(ライト)・中間(ミディアム)・濃いめ(ダーク) から選択できます。
各濃度における特性は大まかに次の通りです:
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ライト(25%透過) — 室内や薄曇りの日中の使用に適する比較的自然な見え方
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ミディアム(50%透過) — 日差しのある日常活動での遮光効果
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ダーク(75%透過) — 強い太陽光下での遮光に最適
※実際の可視光透過率や紫外線カット性能はメーカー仕様に基づき選択してください。
2) 製品バリエーション
acunisシリーズには主に オーバーグラス型 と クリップオン型 の2種類があります。
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オーバーグラス型(大・中サイズ):普段使用している眼鏡の上から装着するタイプ。度なしで使用することができ、簡便です。
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クリップオン型:既存の眼鏡フレームに取り付けるクリップ式。必要に応じて装着と取り外しができ、携帯性にも優れます。
ローズフィルターグラスには視感透過率や使用シーンに応じて選べる色・形状のバリエーションがあり、患者さん自身の生活スタイルや光環境に合わせて選択可能です。
患者さんへの提案と使用実例
当院では、羞明が主訴で生活に支障を来している眼瞼痙攣患者さんに対して、別途試し用サンプルを用意し、屋内外の照明条件で装用感を試してもらうことがあります。中には、外出時の眩しさが軽減し、屋外での歩行や日中の外出が楽になったという報告も得られています。
患者さんには、次の点を説明しています:
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自分にとって最も不快な光環境(屋外の直射日光・蛍光灯の下・LED照明など)を観察し、レンズの濃度を選択する。
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使用中は、状況に応じて 自分の判断で装用(着脱)する こと。
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完全な症状改善を保証するものではなく、あくまで症状緩和の補助手段であること。
遮光眼鏡の装用が症状改善に効果を示した例もありますが、個々の症状や光環境が異なるため、試用しながら最適な選択を行ってもらうことが重要です。
度付き遮光眼鏡についての現状と展望
現在、日本国内で 度付きの遮光眼鏡を作成する際 には、遮光眼鏡を取り扱う眼鏡店で、東海光学やホヤなどの遮光対応レンズを選び、オーダーメイドで作成する必要があります。通常の遮光眼鏡(FL-41フィルター入り)は度なしでの提供が中心ですが、患者さんからの要望が多いことから、先日エッシェンバッハ社担当者との面談で 度付き通常眼鏡タイプの企画・販売を検討している との情報も伺いました。
この動きは、羞明や光過敏症で 視力矯正と遮光の両方を必要とする 患者さんにとって朗報となる可能性があり、今後の展開への期待が高まっています。
まとめ
眼瞼痙攣やその他の疾患に伴う羞明では、光刺激が日常生活の質を低下させることがあります。このような症状に対して、FL-41フィルターを搭載した遮光眼鏡(エッシェンバッハ社のacunisシリーズ)は、特定の波長域の光を抑制することでまぶしさを軽減し、症状ケアの一助となる可能性があります。製品選択に当たっては、患者さん自身の光環境や装用感を確認しながら、最適な遮光レンズと形状を選ぶことが重要です。
参考ページ
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エッシェンバッハ社「acunis」FL-41搭載遮光サングラス概要 — 国内公式(Eschenbach Optik Japan)
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Eschenbach公式サイト “FL-41 Filters” 製品カテゴリ(海外)
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製品情報例:FL-41 Summerwood Rose Filter Glasses(Walmart商品説明)
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(注意:若倉先生開発のHDグラスは透光率1%で、目を使わない時の目への光刺激を遮断するという目的のものであって、ここで述べたような遮光眼鏡とは全く別の目的で開発されたものです。)



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