ドライアイへの老化の影響
清澤のコメント:目の老化の中でもドライアイは重要な部分を占める変化である。老化のドライアイへの影響を考えて見た。涙の不足、涙液機能障害は、涙腺と涙腺機能ユニットの構成要素の変化に起因する。涙液機能障害のある40歳以上の多くの患者は、涙液層が不安定で、根本的原因としてマイボーム腺機能不全(MGD)を示す。
- ドライアイの危険因子としての老化:老化はドライアイの重大な危険因子である。50歳以降女性と男性のドライアイの有病率は増加し、女性の有病率の方が高い。生後60年を通じて女性の涙液分泌は減少しつづけ、ドライアイでは角膜表面の乱れがコントラスト感度と機能的視力を低下させて、視覚機能を低下させる。ドライアイは、読書などの日常的活動に大きな影響を与える。平均余命の増加に伴い、ドライアイが眼科受診の主な理由であり続ける。涙腺(LG)は、加齢により著しく損なわれ、腺房萎縮などの組織病理学的変化がヒトの主涙腺で観察される。涙腺のびまん性萎縮は、女性でより頻繁に観察される。
加齢に伴う瞼の変化には、瞼の弛緩、マイボーム腺萎縮、涙液量の減少、およびドライアイが含まれる。フルオレセインなどの診断用染料によりドライアイは識別できる。マイボーム腺はアンドロゲン受容体を持ち、アンドロゲン刺激に反応するから、MGDは男性でより頻繁に見られる。
別の頻繁な加齢に伴う障害は、結膜が折りたたまれて冗長になり、涙点を閉塞して眼の不快感を引き起こす可能性のある結膜弛緩症である。加齢に伴うドライアイには重大な炎症と複雑な免疫応答があり、深刻な涙腺と眼表面の変化を引き起こす。
2、年齢に関連する併存疾患と医原性ドライアイ
老化の併存疾患に使用される薬も、眼の表面に有害な二次的影響を与える可能性がある。二次的な眼の乾燥効果をもたらす可能性は降圧薬、抗ヒスタミン薬、抗うつ薬にはある。緑内障も、高齢者に多く、眼の炎症を訴えることがよくある。点眼薬の防腐剤の塩化ベンザルコニウムも、眼表面に有毒である。
3、加齢に伴うドライアイにつながる可能性のあるメカニズム:
免疫系はまた、感染症への感受性の増加を特徴とする免疫機能の低下も起こす。老化の典型的な特徴は、炎症性サイトカインの産生の一般的な増加を特徴とし、悪性度の低い慢性炎症状態である。血清炎症性メディエーターの増加は、アルツハイマー病、認知症、パーキンソン病、2型糖尿病にも関連している。老化に関する他の加齢に関連する細胞/代謝理論には、酸化ストレスの増加、DNA損傷の増加、DNA修復の変化、タンパク質糖化の増加、テロメア短縮、プロテアソーム機能の低下などもある。
日本では涙液量低下や濃縮を重視するが、欧米ではドライアイが炎症を伴うという説が強い。過去20年間で、ドライアイは、単なる涙の減少から、炎症と自己免疫が重要な役割を果たす病気へと変化した。ドライアイ患者の結膜および涙液において、IL-6などの炎症性およびT細胞関連メディエーターのレベルの上昇が認められる。ドライアイは慢性疾患だが、運転、長時間のビデオディスプレイの視聴などの活動を行う場合、急性の悪化が頻繁に起こる。乾燥環境条件への曝露は、眼表面のストレス感知細胞/経路を活性化し、上皮細胞自体で検出できる炎症誘発性サイトカインを合成および分泌する。これが角膜侵害受容器を感作し、表面上皮変化を引き起こし、角膜バリア機能障害を引き起こす可能性がある。
4、加齢に伴うドライアイの動物モデル:様々な動物のモデルがあり、それぞれにドライアイを説明している。
- 女性であることはドライアイの危険因子である。
- 老化したCD4 + T細胞は自発的に自己反応する。
- インターフェロン-γは、加齢に伴う杯細胞の喪失に関与する。
- 老化した制御性T細胞は機能不全である。
- 老化した涙腺の酸化ストレスは涙液分泌を損なう。
- 老化したマイボーム腺は萎縮する。
5.加齢に伴うドライアイの治療:
米国でのドライアイを治療するためのFDA承認薬は2つだけだ。T細胞モジュレーターであるシクロスポリンが広く使用された。T細胞の遊走に関与するリンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)の新規阻害剤であるリフィテグラストは、治療するための承認を得た。日本では、ヒアレイン(保湿)、ムコスタ(マイボーム腺を増やし摩擦を防ぐ)、ジクアス(涙液分泌の増加)の点眼がそれぞれ承認されている。ドライアイを改善する非薬理学的アプローチは、サプリメントの使用を勧め、多価不飽和脂肪酸が経口サプリメントで人気がある。ドライアイの老化に対するより包括的なアプローチが提案されており、カロリー制限(CR)の使用と、ビタミンおよび抗酸化物質の補給が含まれる。
結論:老化には、相互作用している可能性のある複雑な生化学的、分子的、免疫メカニズムが含まれる。眼表面の炎症は、加齢に伴うドライアイに関与する。老化のメカニズムを理解する事が、早期の介入と末期の臓器萎縮と眼表面病変を防ぐ。
参照:Cintia S. de Paiva、MD、Int OphthalmolClin。2017年春; 57(2):47–64。DOI: 10.1097 / IIO.0000000000000170
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