角膜鉄錆症は、角膜に鉄の粉や破片が入り、錆が発生した状態を指します。この病状は、角膜に激しい異物感や痛みを伴い、炎症、角膜混濁、視力低下を引き起こします。
鉄やニッケルは、非常に身近な金属ですが、生物に対しては非常に毒性が強い物質です。とても敏感な角膜に付着したままにすると重い障害を引き起こす恐れがあります。角膜鉄錆症は、鉄が角膜に付着してから、わずか1日で発症します。鉄が付着した部分には、炎症が起こり、鉄片の周囲にはリング状に褐色の錆が発生します。錆が発生してしまうと、鉄片を取り除く処置だけではなく、錆を削り取る治療が必要で、錆を削り取った後には傷痕が残ることがあります。
角膜鉄片異物を放置して、錆が眼球内部にまで及ぶか、あるいは角膜や強膜を貫通して眼球内に異物が入ると、眼球鉄錆症という更に重い障害に発展する恐れがあります。網膜剥離や緑内障、白内障などを併発すると、視力低下や視野障害を引き起こし、最悪は失明に至ることもあります。木片は比重が小さく角膜を貫通しにくいのに対し、1mm程度の大きめの鉄片では角膜を貫通しやすい特徴があります。
一般的な治療法としては、点眼薬の麻酔をしてから、針やセッシで異物を除去し、感染予防の処置も行います。角膜に刺さっている異物は、顕微鏡下で丁寧に除去する必要があります。鉄片が刺さって、錆が発生している場合は、錆を小さなドリルなどで削り取ります。除去後は感染を予防するために、抗菌作用のある点眼薬と傷を早く治すための点眼薬(ヒアルロン酸など)を処方します。痛みが強い場合は眼軟膏を塗って眼帯をつけることもあります。治療後は、2~3日後に必ず経過観察のために受診していただきます。
鉄や銅などの毒性の高い金属を扱う仕事をされている方は、作業中にゴーグルや保護用眼鏡を使用して、眼に金属の破片が入らないように注意してください。また、眼に金属の破片が入った時は、すぐに眼科を受診してください。眼球内に入った異物は大至急硝子体手術で除去する必要があります。
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